低価格「ワイモバイル」が本家より売れる理由 「適度な安さと安心」でソフトバンクを上回る

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ソフトバンクグループの社長を務める孫正義氏に代わり、国内事業を統括するソフトバンクの宮内謙社長。国内も難しい舵取りが求められそうだ(撮影:大澤誠)

また、ソフトバンク回線を用いたMVNOの増加も影響しそうだ。ソフトバンクは低価格を求めるユーザーをワイモバイルで獲得する狙いもあってか、MVNOへの回線貸し出しは大手3社の中で最も消極的だ。

ただ、総務省のICT安心・安全研究会が昨年に実施したモバイルサービスに関する有識者会合では、MVNOが携帯会社から回線を借りる際に支払う接続料が最も安いNTTドコモと、最も高いソフトバンクとの間で1.5倍の差があることが問題視された。接続料の算定方法を統一することで、この差を小さくするよう、提言がなされている。

低価格サービスをコントロールできるか?

さらに昨年10月、MVNOの日本通信が、ソフトバンクと回線接続に向けた協議を進めたものの、拒否されたとして総務省に協議再開命令を申し入れた。その結果、総務省は日本通信側の主張を認めて協議再開命令を出す方針を打ち出している。

このように、ソフトバンクはMVNOを拡大せざるを得ない状況に追い込まれつつある。今後は低価格サービスを、自社でコントロールしづらくなる可能性がある。

市場環境の激化と、自社回線を用いたMVNO増加の可能性。これら2つの課題にどう立ち向かうかが、ワイモバイル、ひいてはソフトバンクの低価格戦略のカギを握るといえそうだ。

佐野 正弘 モバイルジャーナリスト

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さの まさひろ / Masahiro Sano

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける

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