2016年は、米国や英国など多くの先進国で、ポピュリズムが優勢を誇った。所得の低迷、経済的機会の縮小、不満の広がりを背景に、有権者は、「人民」に権力を戻し、腐敗した「エリート」に有利なシステムを打破すると主張した候補を支持した。
米国ではオバマ大統領が高い支持を得ていたが、連邦政府への国民の支持率は19%まで下がっていた。こうした信認低下が、昨年11月の大統領選でドナルド・トランプ氏を勝たせた。
トランプ政権は共和党の伝統的なやり方に基づいて、軍事を除く政府支出を抑制する可能性が大きい。医療や教育、訓練、環境向けの支出削減と、逆累進化の色彩が濃い個人・法人向け減税によって、皮肉にも、大半の世帯への恩恵が薄まる一方、「エリート」はさらに豊かになりそうだ。
米国人が信頼するのは「国よりも州や地方」
だが、連邦政府が取り組むべき主要な社会・経済的な課題が残り続ける中で、州や地方自治体は革新を進める重責を担い続ける。
ギャラップ社の年次世論調査によると、米国人の62%が州政府には問題解決能力があると回答、地方自治体に関しては、この比率は71%に上った。
2014年のピュー研究所の調査では、国家の政策に満足しているとの回答率は25%に過ぎなかった一方、自治体による行政に満足しているとの回答は60%に達していた。
米国憲法は各州政府が革新的な政策を独自に行うことを認めており、成功例も多い。たとえば、ワイオミング州は19世紀に、世界で最も早く女性の選挙権を認めた。ミシガン州やウィスコンシン州の福祉事業はクリントン政権の全国的な福祉プログラムのひな型となった。オバマケア(医療保険制度改革)の原型はマサチューセッツ州が導入した医療制度だ。