あの鴻海・郭台銘がトランプを意識し始めた シャープを買った豪腕経営者が放つ大胆投資

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これほどの巨大な組織だが、方針決定は極めてスピーディー。まずはやってみる。そして、間違っていたら修正する、というのが郭会長の性格である。ただし午前中の決定が午後には変わっていることがある。となると、会社中は大騒ぎになるが、変わらないことが1つある。それは「郭会長の命令は絶対」ということだ。

こんなエピソードもある。シャープへの資本参加が最終段階に入ったときだ。日本にいた郭会長は、前日夜になって、翌日の銀行との会議にある幹部を出席させるべきだと考え、台湾の龍華工場にいたこの幹部に緊急の電話をかけた。

この幹部は、翌朝には会議に姿を現した。電話の後、ただちに龍華工場からバスで深センに行き、そこから船で香港に着いた。そして、夜中0時の航空機で朝5時過ぎに成田空港に到着すると、車を飛ばして8時前には会議の場所に到着し、待っていたのだ。ホテルに入ってシャワーを浴びる時間も取らなかった。このように、鴻海の幹部は郭会長の指示を受けると、条件反射のように使命を達成するため命をかける。

2020年の台湾総統選挙に出馬?

郭会長は台湾にいる場合、毎朝9時には会議を開く。この会議には、重要幹部のほか、会長室のメンバーが加わる。会長室は、11の事業部門からそれぞれ3~5人派遣された若手社員たちで構成され、会長直属となる。これらの若者を通じて、郭会長はより的確に会社の状況を把握できる。毎日の会議に参加することで、自然に鴻海の精神を植えつけられていく。

郭会長スタイルに満ちた鴻海流が、海を渡って日本に伝えられた。郭会長は華麗な転身を遂げ、世界のステージに立つことができ、そのグループは、中国、日本から米国にまで拡大しようとしている。

ただ、台湾人が気にするのは、やはり郭会長が台湾の総統選挙に出馬するかどうかだ。2020年の総統候補として、誰もがよく知るこの人物が登場するのか。答えは郭会長の心中にしかない。

(台湾『今周刊』2016年12月26日号より)
 

劉兪青、林宏文 台湾「今周刊」記者

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