あの鴻海・郭台銘がトランプを意識し始めた

シャープを買った豪腕経営者が放つ大胆投資

この部屋には、12台のモニターが並ぶ大きな壁があり、1つのモニターには1つの工場が充てられている。郭会長が指示すると、1時間後には工場に充てられたモニターにその工場のすべての重要幹部が現れ、郭会長が会議を取り仕切るのだ。12台のモニターを通じて、世界各地にあるすべての工場と会議を開き、最新の動向を把握することができる。そのうち、シャープのモニターには、戴正呉社長がほとんど毎日登場している。

同時に郭会長は、鴻海の重要な事業群の責任者に対し、シャープの製品をそれぞれ1項目選び、商品の改善やコスト軽減、販売増加に協力するよう要求した。鴻海は現在、本気でシャープ政策を執行している。

まず鴻海は、シャープが開発した特許と半製品を製品化し、売り上げを増やし、粗利を向上させ、収益を安定化。そのうえで再度資本を投下し、シャープが最も得意とする、先端技術の開発を発展させる方針だと考えられる。

戴社長は給料もらわず、専用車も廃止

振り返ってみると、シャープ社内の再建に当たっては、従業員の意欲を高めるところから始まっている。9月末時点で、郭会長は手元の現金が少ないにもかかわらず、旧シャープ本社の向かいにある田辺ビルを買い戻した。かつてのシャープの栄華を取り戻そうとする決意を十分に示すことになった。続いて、戴正呉社長が3通の公開書簡を送って社員を激励すると同時にそれまでの減給方針を一転し、インセンティブを追加した。

さらに郭会長スタイルのコスト管理も登場する。郭会長が持つ、2機のプライベートジェットの飛行時間の9割は、鴻海の仕事に使われている。それ以外の時間はリースされることもある。しかも、満席にならなければ、出発しない。人数が足りなければ、幹部が呼び出される。飛行機が離陸すると、目的地に到着するまで会議が続けられる。

戴正呉社長は、こうした鴻海流の質実スタイルをシャープに持ち込み、自ら体現した。給料を受け取らず、社長専用車を廃止。高級車に乗り、高級ホテルに泊まり、豪華な美食を楽しむという、過去のシャープ幹部の悪習をすべて廃止。荷物も自分で宿舎に運んだ。

2016年4~9月期の財務報告では、シャープの売上高は依然として前年同期比28%マイナスだが、厳格なコスト管理によってコストは32%削減されたため、この半年で黒字転換を達成した。

しかし、長期的に基礎から改善するには、何とかして売り上げを増やす必要がある。このため、このところ郭会長が公開の場に姿を見せるのは、ほとんどシャープ商品を売るためのみだ。10月から年末にかけてのバーゲンシーズンの際には、メディアの取材に応じるなど広報活動に徹し、70インチ+60インチの大型液晶テレビを10万セット以上売った。2016年の鴻海の株主総会で、郭会長はウォーターオーブンを宣伝した。

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