新潟の「ぶっ飛んだ」列車はこうして生まれた

「同じ列車はダメ」デザイナー・川西氏の哲学

この方針で川西氏が以前取り組んだのが土佐くろしお鉄道の中村駅。かつて、中村駅の待合スペースはつけっぱなしのテレビを目当てに訪れる人々が昼間から酒盛りをしているような空間だったという。そこを思い切って高校生のためのスペースと割り切って改良。鉄道にとって将来の客である高校生のために、「中村の駅で存分に贅沢をしてもらおう」と考えた。

「列車の本数が少ないですから、駅で1時間半とか待つんですよ。その間に勉強をする子もいるんですが、以前は床にノートを広げているような子もいた。いやいや、そうじゃないでしょう。だったら、四万十のヒノキを贅沢に使ったテーブルと椅子を置いて、そこで思う存分勉強してもらう。友達同士でコミュニケーションを取ってもらう。そして、大学生になり、大人になって都会に出ていったときに『中村は良い駅だったね』と思ってもらい、岡山からの特急で凱旋してもらうと。そのためには、高校3年間で中村の駅を使って思い切り贅沢をしてもらう必要があると考えたんですね」

どうやってニーズを汲み取るか

駅を改良する際に、どのようなものを目指すか。ありがちな利用者アンケートなどでは「トイレをキレイに」「コンビニを作って欲しい」程度のニーズを見出すのが関の山。川西氏は、「アンケートでは絶対に見えてこない、隠れたニーズをどれだけ汲み取るのか、というのが建築家・デザイナーの腕の見せ所」と語る。中村駅では「地元高校生の勉強の場」というニーズを見出した。そして結崎駅では「ベビーカーを使う母親たち」にターゲットを絞りつつ、新たな試みで隠れたニーズを探し出そうとしている。

「フューチャーセッションというのをやっているんです。あまねく町人のニーズを拾うため、お年寄りから子供までできるだけ多くの立場の方々に集まっていただいて、ニーズを聞く。そういう集まりを定期的に行っています。そして、そこで上がった意見をわれわれがひとつひとつ丁寧に分析し、さらにWebで公開しています。これをやることで、われわれだけではわからないようなニーズというのが出てくるものなんです」

「たとえば、駅に託児所があって30分100円程度だったら払うというお母さんがたの声があった。なぜかというと、子どもとスーパーに行くとどうせ100円200円のお菓子を買うことになるから、と言うんですね。なるほどなと。また、幼稚園を訪れた際に園長さんがふかし芋を出してくれた。子どもたちが育てている芋ですね。でも、園長さんは『ふかすより焼いたほうがおいしい』と言うんです。けれど法律上焚き火ができないのでふかしている。となれば、駅前の広場を町が買い取って整備して、焚き火ができるようにしようぜ、と」

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