安倍政権を賑わす「物価水準の財政理論」とは

他の理論との整合性欠き、誤用のリスクも

物価水準の財政理論を詳述すれば、次のようになる。政府の収入と支出の帳尻を考えれば、

税収+国債発行=財政支出+国債元利返済費

と表せる(左側が収入、右側が支出)。これが、政府の予算制約式である。ここで、税収マイナス財政支出が基礎的財政収支となる。

基礎的財政収支=税収−財政支出=国債元利返済費−国債発行

つまり、今年の政策的経費を今年の税収で賄えているか否かをみる財政収支の指標で、基礎的財政収支が黒字だと、その分で国債の返済に充てることができる。

この収入と支出が毎年繰り返され、現在から将来にかけて政府の予算制約式を足し合わせれば、結局

今年返済が必要な国債残高=今年の物価×実質基礎的財政収支(※)

となる(今年で経済が終わると考えればそのように導出できる)。

厳密には、

名目国債残高÷一般物価水準=現在から将来にわたる実質基礎的財政収支黒字の割引現在価値

となるのだが、ここでは一般性を失うことなく(※)式に基づき簡略化して説明しよう。

物価水準の財政理論に従えば、(※)式に基づき、今年の物価が決まる。(※)式は、次のことを意味する。他の変数が不変ならば、

・今年の基礎的財政収支が悪い(黒字が少なかったり赤字が多かったりする)と、今年の物価は上がる。
・今年返済が必要な国債残高が多いと、今年の物価は上がる。

国債の返済先送りを続ければ物価は下がることに

これは、先の数値例でみても妥当する。今年の基礎的財政収支が悪いと、国債の返済財源が十分に用意できないこととなり、その分だけ国債返済の実質価値を目減りさせるように、マクロ経済で物価が上昇する形で調整される。また、今年返済が必要な国債が多いと、その分だけ国債返済の実質価値を目減りさせるように、マクロ経済で物価が上昇する形で調整される。

物価水準の財政理論に基づけば、今年の物価を上げたければ、今年の基礎的財政収支を悪化させればよい。基礎的財政収支を悪化させるには、財政支出を増やしたり減税したりして財政拡大させればよい。これが、ジャクソンホール会議でシムズ教授が語ったことである。前述のように通貨価値を目減りさせる(つまり物価を上げる)ように通貨供給を増やす、という話とは無関係である。

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