優良FA部品メーカーvs空売りリポートの行方

丸紅、サイバーダインの次はSMCが標的に

最近、日本でも物議を醸し出している空売りファンドやリポート。今回、ターゲットとなったのは東証に上場し、優良企業とされているSMCだった(記者撮影)

再び日本株が「空売りファンド」「空売りリポート」の標的になっている。そのターゲットはロボットやFA(工場自動化)機器で使われる空気圧制御機器の世界トップ企業SMCだ。2016年3月期の売上高は4756億円、営業利益1342億円。営業利益率約30%という超高収益企業だ。

時価総額も2兆円前後のSMCに対し、ある投資家向け調査会社が12月13日に発表したリポートが株式市場を揺さぶった。「会計神話をパンクさせよ、株価に最大85%の下落余地」という、センセーショナルな見出しで始まるリポートが発表されると、前日まで3万円前後で推移していた株価が急落。一時10%以上値を下げた。

現金や棚卸資産に疑念

リポートを発信したのは、企業の不正会計や会計上の不備を調査し、「売り」を推奨するリポートを顧客に提供するウェル・インベスメンツ・リサーチ社。2015年12月に、「巨額の減損リスク」と題し、大手商社の丸紅が減損処理を意図的に遅らせたのではないか、という疑惑を投げかかるリポートを公表した。

さらに、2016年7月には医療・介護用ロボットスーツ「HAL」を開発し、市場の注目度が高いサーバーダインに対しても「口先ばかりで成果伴わず?」と、相場の思惑よりも期待利益がかなり小さいのではないかというリポートを発表している。「証券会社のアナリストリポートは会社側に迎合的だが、われわれは独立した立場から批判的な意見をいう」(ウェル・インベストメンツ・リサーチの荒井裕樹リサーチ・ディレクター)。

同社は、公表前にファンドなどの顧客に対して下落リスクの恐れのある銘柄のリポートを提供、リポートを入手したファンドなどの投資家は空売りポジションを取り、そうした事実が表面化し、株価が下落すれば、その時点で買い戻して利益を上げることができる。

実際は、リポート公表後に市場が反応して株価が下落すればそれだけでも利益を確保することができる。さらに、「一般に入手できる情報をもとに意見を表明している。さらに根拠を提示しているので、風説の流布にはあたらない」(荒井氏)と説明する。

今回のリポートの中で、SMCの財務数値に対するさまざまな疑念を提示している。たとえば現預金が同社の現金保有残高の25%に相当する817億円が存在しない可能性があるという点。同社の主要子会社の現金残高を合計すると、それだけ不足するという。

また、棚卸資産が過大で、50%以上の在庫は古い在庫で償却する必要があるのではと指摘。さらに、頻繁に全子会社の46%しか連結対象にしていない点や、買掛金の決済の多くが、手形決済ではなく、役員の多くの出身銀行であるりそな銀行系列のファクタリングサービス会社を経由させている点、創業家の髙田芳行会長と密接な事業パートナーとの取引上や登記上の疑問点などを挙げ、架空売り上げの可能性や、利益の水増しの余地があるのではと指摘している。

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