伊藤忠は、本当に「不正会計」をしているのか 米国空売りファンドの幹部に真意を直撃

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米空売りファンドのグラウカスは、伊藤忠について「強い売り」と推奨した
上場企業の不正会計を調査し、空売りを仕掛けて公表する、米国の投資ファンド、グラウカス・リサーチ・グループ。同社が日本市場に上陸後、最初のターゲットに選んだのは伊藤忠商事だった。7月27日朝、「伊藤忠商事が1531億円相当の減損損失の認識を意図的に回避し、2015年3月期の当期純利益を過大報告したと考えている」という、42ページ(日本語版は44ページ)の調査レポートを公表。伊藤忠の株価は一時、年初来安値を更新した。
グラウカスは「弊社は伊藤忠に空売りポジションを保有しており、同社の株価が下落すれば、相当の利益が実現する立場にあります」と、自らの立場を明確にしながらも、目標株価を前日終値の半値である631円に設定し、「strong-sell」(強い売り)を推奨。日本では異例だが、近年、米国ではこうした空売り専門調査会社が株式市場を動かすことは、珍しくない。なお、伊藤忠側は同じ27日、グラウカスのレポートを「当社の見解とは全く異なる」と、完全否定している。
グラウカスはどのような手法で調査を行い、日本企業をターゲットにしているのか。グラウカスでリサーチ部門のディレクターを務める、ソーレン・アンダール氏に書面で話を聞いた。

伊藤忠の株主は問題を認識せよ

――日本では近年、オリンパスや東芝をはじめ、大企業の会計スキャンダルが相次いだ。今回日本のマーケットに進出された背景を聞かせてほしい。

われわれは以前より、日本市場にしばらく目を向けてきたが、安倍晋三首相のコーポレート・ガバナンス(企業統治)の水準向上、および、透明性の強化に対する取り組みを受け、日本企業の調査により多くの時間を充当するようになった。

――なぜ今回、伊藤忠商事をターゲットに選んだのか。

安倍首相が取り組むコーポレート・ガバナンスや透明性の確保には、日本の市場参加者が投資に関する意見を自由に交換できるようになる必要がある。同時に、われわれはマーケットに、今回の伊藤忠のような疑わしい会計処理に対する批判的分析がこれまでなかったと考えており、42ページに渡るレポートを作成するにいたった。

伊藤忠の株主や投資を検討している投資家が、今回われわれが提起する問題を認識すること、ならびに、全ての投資家が十分な情報を踏まえたうえで投資判断ができるよう、公の場で議論することが必要だと考えている。

次ページ調査には500~600時間を費やした
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