情報流出「不倫サイト」、実は生き残っていた 「アシュレイ・マディソン」の再生策とは?

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さらにこのハッキング事件をきっかけに、以前から同サイトに噴出していた疑惑も明るみになる。登録されていた女性会員のうち、かなりの数に上るアカウントが架空のものであり、「フェムボット」と呼ばれる女性ユーザーを装うプログラムによって男性会員との会話を偽装していたというもの。ハッキングしたImpact Teamの調査によれば、女性会員のおよそ90%が偽者=サクラだったという。

一連の事件を受けて、アシュレイ・マディソンなど出会い系サイトを束ねていた、アヴィット・ライフ・メディアの創業者で当時のCEOだったノエル・バイダーマンは辞任。ハッキングによって会員の匿名性が失われ、女性会員の偽装が表面化した以上、もはやサイトの存続も不可能かと思われたが、同サイトはその後もサービスを継続しているどころか、ここへきて会員数を増やしているというのだ。

“事故物件”サイトの経営をなぜ引き受けたのか

しかし、「ハッキングによる顧客情報の流出事件の後も、サービスは続けていました」と、今年4月にCEOに就任したロブ・セガール氏は語る。「現在の会員数は5000万人。その中で月に最低1回ログインしているアクティブユーザーは1600万人。1日およそ2万人になります」。

セガール氏は自身で立ち上げた広告代理店を売却した経験を持つ、マーケティングの専門家としても有名な経営者。そんな華々しい経歴を持つビジネスマンが、あえてこの“事故物件”ともいえる不倫サイトの経営を引き受けた真意はどこにあるのか。

「私がCEOのオファーを受けたのは、ハッキングが起きた後の昨年9月のこと。もちろん懸念する点はたくさんありました。ただ4カ月半ほどリサーチする時間があったので、その期間に過去に何があったのかはもちろん、サイトの実情や事件のことについても調査しました。するとサイトにはいまだに何百万人というユーザーがいて、われわれのサービスを求めていることがわかった。皆さんのためにも新しい方向性でやっていきたいと考えました」

マーケティングの専門家を迎えた同社は、経営陣を一新し、運営会社名も「ルビー」に変更。さらに、不倫サイトとのイメージを一新すべく、サイトのリニューアルに際してコンセプトも「Find Your Moment」に変えた。日本語では、「今、この瞬間を生きよう」と訳されている。

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