嫌われる仕事「営業」を人気にする2つの視点 慢性的な長時間労働は変える余地がある

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では、どうして勤務時間が長くなってしまうのでしょうか? 取材した事務機器の営業担当者は、取引先から急な見積もり依頼が舞い込み、対応のため担当営業は深夜まで残業を強いられる日々とのこと。「そんな無理に社員が深夜残業をして対応する必要があるのですか?」と聞いたところ「対応しなければ別の会社に取られてしまいます」と回答が返ってきました。「他社ならやってくれますよ。ならば、次回は他社に頼みます」と言われる恐怖で取引先を優先しすぎる慣習も、長時間労働をなくせない大きな要因と言えそうです。

勤務時間を減らそうとする機運が高まっている

ただ、昨今の「働き方改革」の動きにより、残業を減らすことを日本政府が求め、営業職の間でも勤務時間を減らそうとする機運が高まっています。だとすれば、営業職の残業も減って、人気は高まるでしょうか?

当方の営業職時代を振り返っても、長時間労働は慢性的にありました。朝は8時に出社して9時には取引先に到着。1日に5~6件の訪問をこなして、帰社。それから、翌日に向けての準備作業を深夜まで行う毎日。さらに、週に数回は取引先との会食が入ります。その会食で時間が押し、準備作業は深夜から早朝に至ることもありました。体は相当に疲弊していたと記憶しています。だだ、営業成績がよかったこともあり、仕事に対するやりがいは強く感じていました。なので、学生に対する会社説明会などでは、

「営業の仕事はキツイこともあるけれど、それ以上に得ることが多い仕事です」

と語ってきました。でも、そんな説明は現在の学生には通用しないかもしれません。学生の間では年収より、離職率や残業時間、有給休暇の消化率に注目する傾向が高まっています。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが今春の新入社員に行った調査では、「残業が多くても給料が増えるのだからよい」という回答が37.6%、「給料が増えなくても残業はないほうがよい」という回答が62.4%で、残業に対して否定的な見方をする新入社員の割合は調査開始から過去最高となっています。営業職も勤務時間が長いままの状態が続くなら、人材の確保は相当に難しいことを感じさせる調査結果ではないでしょうか?

当方は営業職こそ、長時間労働をやめて、働き方改革に貢献できる職種であると思っています。その理由は大きく2つ。1つ目は削減できる「無駄な時間」を放置している可能性が高いから。これまでかかわってきた営業組織で無駄な時間が多いと感じる機会は頻繁にありました。例えば、

・やたらと長い営業会議

・目的のあいまいな訪問

・活用されていない業務日報

など。ところが無駄を探して勤務時間を減らそうとする取り組みを見かけることはなかなかないのが実情。その理由は、営業部門をリードする組織長に問題意識が低いからではないかと考えています。営業は明確に成果を出すことが求められる。だから、勤務時間の削減が成果につながる確信がないなら、現状を変えたくないと考える組織長が多いのです。

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