ビール減税を喜べないメーカーの深刻な事情 「第三のビール」は消滅、酒税法改正の狂騒曲

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業界の要望を受けて、与党の税制調査会や財務省主税局はビール類税率の一本化について検討を重ねてきた。具体的には2013年ごろから、ビールを減税し発泡酒・新ジャンルを増税する方向で調整していたが、2014年は衆議院解散総選挙、2015年は消費増税に伴う軽減税率の議論が優先されたため、先延ばしされた経緯がある。

こうした酒税の一本化を見越して、最初にビール強化に動いたのは業界3位のサントリーだ。同社は「金麦」など新ジャンルが販売数量の6割以上を占めるため、増税は死活問題となる。

ビール比率向上に動いたが…


2015年9月に旧「モルツ」を刷新し、「ザ・モルツ」を投入。続いて、キリンが主力「一番搾り」の派生品を、サッポロが高価格帯「ヱビスビール」をリニューアル。業界首位のアサヒも「スーパードライ」の不調を受け、3月に「ザ・ドリーム」を投入するなど、各社はビール比率の向上を進めている。

だが、今回の税制改正大綱では、2020年10月から3段階で税率を変え、2026年に1缶当たり55円程度に統一する方向とみられる。アサヒグループホールディングスの小路明善社長は「ビール税の早期改正を要望する」と語気を強めるが、想定以上に時間がかかる感は否めない。

さらに、同じ分類に属する酒類同士の税率格差を是正する観点から、ほかの酒類の税率も変更される。

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