ビール減税を喜べないメーカーの深刻な事情 「第三のビール」は消滅、酒税法改正の狂騒曲

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最も影響が大きそうなのはチューハイへの増税だ。各社は発泡酒や新ジャンルの受け皿として、より低価格なチューハイやハイボールの品ぞろえ・広告戦略を強化してきた。

チューハイ、ワインは増税か

サントリーによればチューハイなどの市場規模は2015年で前年比9%増、2016年も同7%ほどの伸びが見込まれる。そのチューハイは現状の350ミリリットル缶28円から35円程度に増税となりそうだ。醸造酒類のワインは増税、清酒(日本酒)は減税となる見込みだ。

また、税一本化の議論に隠れて目立たないが、今回の税制改正では原料の自由化も検討されている。これまでオレンジの果皮などを使うと発泡酒扱いだったが、これからはビールとしての販売も可能になりそうだ。

税率が統一され、原料の自由化も進めば、発泡酒がビールに対して持っていた、低価格や機能性といった優位性は失われる。新ジャンルに至っては、商品区分自体が発泡酒に組み込まれ、消滅する見込みだ。

自民党税制調査会幹事の西田昌司参議院議員は「ビールの定義は国際基準に合わせていくべきだ」と言う。

これまでメーカー各社は酒税制度に対応するため、莫大な費用を投じて、発泡酒や新ジャンルを育成してきた。こうした商品の市場縮小が避けられない一方で、人口減少や消費の多様化が進む中、減税を機にビール市場を回復させるのは容易ではない。

今回の酒税法改正にどのように向き合っていくのか。各社の命運が懸かっている。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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