アドビが「2ケタ成長」を続けられる根本理由 変革を恐れないからこそ進化がある

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Shantanu Narayen/デジタルフォト共有技術のパイオニアであるピクトラの共同設立者。その後、 シリコングラフィックスのデスクトップ製品およびコラボレーション製品担当のディレクター、アップルの上級管理職を歴任し、1998年にアドビに入社。ワールドワイド担当の製品開発担当シニアバイスプレジデント、社長兼COOなどを経て、 2007年12月に社長兼CEO就任

集めたデータから何をどうやって読み取るかも重要になってきている。データから何らかの傾向や課題などを発見したとして、それを製品作りやサービスなどにどうやって生かしていくか。顧客企業の多くは、われわれのツールを使うことで、自らの業界で何が本当に起こっているのかに対する理解を深めている。

また、顧客企業の多くが、事業や企業内の再編成を迫られている。たとえば、銀行の場合、顧客は窓口だろうと、電話だろうと、ネットだろうと、同じサービスを使い、同じ顧客体験ができることを望んでいる。しかし、そういったことを可能にするには、企業はそれぞれの縦割り型組織を壊して、再編しないといけない。

――こうしたニーズに対応するには、アドビ自体が変わらなければならなかった。

アドビの売上高は年率20%のペースで増えており、株価もほぼ右肩上がりで伸びている。その背景には、われわれが常に変化に素早く反応し、進化することを自らに強いていることがある。デジタルマーケティング分野はアドビが作ったと言っていいと思うが、成長分野だけにライバルがどんどん増えてきている。競争は非常にいいことだが、リーダーであり続けるためには、これまでよりも早いペースでイノベーションを起こさないといけない。

変革に必要なのは「旗」と「道」

――多くの企業が、変化に素早く対応したいと思いながら、なかなかできません。アドビではなぜそれが可能なのでしょうか。

変革するにはまず、旗を立てて、そこへ道を作っていかなければいけない。アドビの場合は、将来的にどうなりたいか、どこに旗を立てるかという明確なビジョンがあり、多くの社員がアドビの「マーケティング分野に進出する」「クラウドに移行することでクリエイティブの世界を根本から変える」という、新たな目標に意欲をかき立てられた。その後われわれがやるべきことは、そこへ続く道をしっかりと作ることだ。旗を立てるのがうまい会社もあれば、道を作るのがうまい会社もある。が、大事なのは両方をきちんとやることだ。

また、アドビが恵まれていたのは、経営陣が一丸となってこの変革に挑んできたことだ。経営陣の情熱がなければ変化を起こすことができない。同時に、アドビにはモチベーションの高い、つねにイノベーションを起こしたいと考えている社員がいる。われわれは、目標を掲げただけでなく、こうした優秀な人たちを巻き込むことができたわけだ。

クラウドに移行することが最終的には顧客のためになるという確信があったこともある。サブスクリプション型に移行すれば、最初は収益が落ち込むことはわかっていた。だが、アドビはつねに革新的な企業でありたいと考えていたし、新たな市場を創造することも得意としてきた。容易な道のりではなかったが、経営陣と社員が一丸となって変革期を乗り越えた意義は、とても大きい。

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