泣くな小泉進次郞!農協への「要請」で終わる 農業村の抵抗に挑む青年代議士の闘い<後編>

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本来の農協とは、農家が資材を安く購入するために作った組織である。それが、農家に高く売りつけることによって、農協組織の利益を図るようになってしまった。進次郎が挑戦しようとしているのは、農業資材価格だけでなく、高い農業資材価格の原因を作っている農協、さらには農協を中心とする農業村に支配された農政アンシャンレジーム(旧体制)である。

農業資材の販売で圧倒的なシェアを持っているのに、農協に独禁法は適用されない。カルテルも自由にできる。同じ原料を使いながら、日本の肥料は韓国の倍もする。今回の調査で、肥料について多数の差別化された商品が供給されていることで、韓国よりも高い価格となっていると指摘された。これが他の資材にも当てはまると考えて、商品の数の多さが資材価格の高さを生んでいるという、解説記事を載せた主要紙があった。

肥料については、実際にはJA全農(全国農業協同組合連合会)は単なるペーパーマージンを獲っているだけで、全農傘下の地域農協が「それぞれの地域に応じた」と称する肥料の生産を、メーカーに直接要求する。メーカーはこの多品種少量生産に応じるため、生産ラインを日に何回も止めて製造していることが肥料価格の高さを招く一因だ。しかし、同じことが、農薬や農業生産コストの大きな部分を占める農業機械に当てはまるものではない。高い農業資材価格の基礎にあるのは、農協の独占的な市場支配なのである。

前回の改革では全中を一般法人化したが・・・

農家は全農から高い肥料や農業機械を買わされている(写真:やまぼうし/PIXTA)

2014年に政府の規制改革会議がまとめた農協改革の提案は、安倍晋三首相の強い主張もあり、農協の政治組織であるJA全中(全国農業協同組合中央会)を農協法に裏付けられるものではない、一般の法人とすることに成功した。が、農協の経済活動自体については、巨大な事業体である全農やホクレン農業協同組合連合会などを株式会社化し(協同組合ではなく)、独禁法を適用しようとしたものの、農業村の抵抗により、株式会社となるかどうかは全農などの判断に任されることとなった。協同組合であることで、独占禁止法の適用除外のほか、安い法人税や固定資産税の免除など、様々なメリットを受けている全農が、株式会社を選ぶはずがない。

今回、進次郎の資材価格を通じた農協改革に対し、政府の規制改革会議が呼応した。「1年以内」と時間を区切り、全農は資材の販売から手を引き、どこから資材を購入したらよいかなどコンサル業務を行う組織に変更することを提案したのである。株式会社化によらず農協の独占を崩そうとしたのだ。

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