スティグリッツ氏警告「トランプは危険人物」 「米国経済がトラブルに陥るリスクは高い」

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──年内の利上げは?

イエレンFRB(米国連邦準備制度理事会)議長は制約がある中で非常によくやっている。金融政策だけで完全雇用は実現できない。財政出動が必要なのは明らかだが、共和党が反対してきた。与党になれば、一転して景気刺激策を取るかもしれないが。

先進国の大半がそうだが、米国の金融政策も非常に微妙な状況にある。現在の低金利下では景気浮揚は限定的。財政政策が必要だ。低金利は格差を広げたり、金融市場を歪めたりする懸念もある。

米経済がトランプ大統領の誕生に適応できれば、今年中の利上げもありうる。

とはいえ、トランプの下で米経済がトラブルに陥るリスクはかなり高い。彼は非常に危険な人物だと思う。政策に一貫性がない。慎重を期するなら、彼が間違いを犯したときに景気を浮揚できるよう、今のうちに利上げするほうがいい、となるだろう。

“Not My President”と掲げトランプ氏就任反対のデモを行う人々(11月12日米ラスベガス) (ロイター/アフロ)

人口減で悲観するな

──日本はいまだにデフレから脱却できません。

日本の過密さを考えると、人口減少は、たぶんいいことだ。低成長は気にならない。成長率(国内総生産=GDP)に目が行きすぎている。

デフレは、低成長、つまり総需要の不足によって生み出される症状だから、総需要が増えればプラスになる。

政府債務もさほど懸念していない。債務の多くは、日本銀行が(国債買い入れの形で)保有しているからだ。

気掛かりがあるとすれば、時間当たりの生産性が高くないことだ。生産性向上には、大学や研究機関への投資を増やし、より付加価値の高い産業を育成する必要がある。

私が重視するのは、生活水準や失業率、格差、貧困、時間当たりの生産性だ。日本の失業率は高くないが、格差は大幅に拡大している。デフレのような「症状」と違い、こうした点を注視している。

肥田 美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

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ひだ みさこ / Misako Hida

東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身ニューヨークに移住。アメリカのメディア系企業などに勤務後、独立。アメリカの経済問題や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッツなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネア起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長(英国)など、欧米識者への取材多数。(連絡先:info@misakohida.com)

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