吉野家、低価格競争に“逆張り”新商品 焼き丼2種投入、脱・牛丼依存に布石

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「牛丼だけでは対応できない」

吉野家が大型新商品を投入する背景には、定番品の牛丼だけには頼れない現状がある。門脇専務によれば、「6月の既存店売上高は110%程度とプラスを維持している」というが、社内の計画に比べるとやや下回ったもようだ。

同社のある幹部は、「すでに牛丼店は4000店に達している。顧客の嗜好もさまざまに変化しており、牛丼だけでは対応できない」と、大型新商品を繰り出す背景に、危機感をにじませる。

牛丼各社は低価格戦争を繰り広げた結果、並盛り280円という価格で膠着状態に陥っている。その一方で、低価格路線による集客は限界にきており、6月の既存店売上高は、すき家(ゼンショーホールディングスが運営)が92.9%、松屋(松屋フーズが運営)が94.5%と、いずれも前年割れが続いている。

牛丼各社は、牛丼のトッピングメニューを充実させることや、定番の牛丼よりも価格の高い新商品を投入することによって、客単価の引き上げを狙う。

ただ、吉野家は昨年も各種の新商品を漸次投入したにもかかわらず、通年では既存店売上高の前年比をプラスに持ち込むことはできなかった。悩める牛丼業界に、はたして有効な打開策はあるのか。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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