体の悪いところにピタッと貼り付けるだけで、病気の心臓や目や食道が元気になる。細胞シートは、そんな魔法のような、“生きた絆創膏”だ。
漫画かSF小説に出てくる夢物語に聞こえるかもしれないが、決してフィクションでも未来予想図でもない。治せなかった病気を細胞シートで治す再生医療の時代は、もう始まっているのだ。しかもこの日本において。
「細胞シートを使って、すでに多くの患者を治し始めています。何枚か重ねたり、血管を入れて厚い組織を作れるようになれば、もっと多くの患者を治せるでしょう。15~25年後には心臓、肝臓、すい臓、腎臓などを“丸ごと”作っちゃうようなところまで行き着くと思う。脳全体を作るのは何年も何年も先になるだろうけれども、不可能ではありません」
熱いまなざしで一語一語かんで含めるように説明してくれたのは、東京女子医科大学・先端生命医科学研究所長の岡野光夫教授。細胞シートの開発者で、ノーベル賞候補との呼び声も高い、トップサイエンティストだ。
これが細胞シートだ!
百聞は一見にしかず。まずは細胞シートがどのようなものなのか、ご覧いただきたい。
シャーレの中で拍動を続けるピンクの薄い筋肉片。ラットの心筋細胞を膜状に培養した細胞シートを何層にも重ねたものだ。生命力みなぎるこの不思議なシートを作る技術は、今、注目を浴びている再生医療の実現に不可欠だ。
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