2010年に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」フィーバー以来、漫画『宇宙兄弟』のヒット、ヒッグス粒子の発見、今年10月の英国のピーター・ヒッグス博士のノーベル賞受賞などが重なり、最近の日本は空前の宇宙ブームに沸いている。
湿気が多くて白っぽい日本の夜空を眺めて「星見えないなあ」とつぶやきながら、数十年ぶりに宇宙の本でも読んでみようかと思った人も多いはずだ。
最先端の宇宙観はとてつもない変貌を遂げている。たとえば、2003年には原子やニュートリノのような私たちが知る「物質」は、宇宙全体の4%を占めるにすぎないことが判明。残りの96%は正体不明の暗黒物質と暗黒エネルギーが占めており、宇宙のほとんどは何からできているのか「わからない」ということがわかってしまった。
宇宙については10年ほど前に義務教育で習った程度で、オリオン座とビッグバンという言葉くらいしか知らない記者からすると、まったく隔世の感がある。しかし、そんな記者にもわかるように宇宙を解きほぐしてくれる、宇宙研究の第一人者がいる。村山斉(むらやま・ひとし)東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)初代機構長だ。村山氏は2007年に43歳の若さで現職に就任。
近年はベストセラーになった『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)をはじめ、目から流れ星がこぼれ落ちそうになるほどわかりやすい入門書を次々に世に送り出している。研究の世界でも一般の世界でも引っ張りだこの、スター中のスターなのである。
カリスマ村山氏が作った、異色の研究所
この夏、村山氏が率いる総額140億円の「すみれ(SuMIRe: Subaru Measurement of Images and Redshifts)プロジェクト」の成果がいよいよ出始めた。
ハワイ島のマウナケア山頂にあるすばる望遠鏡で、満月9個分の大きさを持つアンドロメダ銀河のほぼ全体を一度に撮影することに成功。
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