白熱教室:灘高の英語授業はこうなっている 日本の英語教育を変えるキーパーソン  木村達哉(上)

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 昨年11月から始まったこの連載では、日本の英語教育の現状と将来に関して、私なりの見解をさまざまな側面から述べてきました。そしてこの4月からは、同じ英語教育界に身を置き、著しい成果を上げておられる先生方の指導理論を具体的に紹介しています。
 2人目のゲストとしてご登場いただくのは、灘中学校・高等学校の英語教師、木村達哉先生です。キムタツの愛称で知られる彼とは数年前から親しくさせてもらっています。今回インタビューをさせてもらおうと電話すると、東京にセミナーでやって来るとのこと。キムタツ先生が実際に灘高の授業でどのようにリスニングとリーディングを教えているのか、学校の英語の先生を対象にお話するというので、頼み込んで私も出席させてもらいました。
 読者のみなさんも、東大生を大勢輩出する名門校の名物先生の英語の授業が、どんなものなのか大いに興味があると思いますので、今回はインタビューではなく、キムタツ先生のセミナーの模様を、そのまま3回に分けてお届けします。
 教科書出版社の啓林館さんが主催の同セミナーは、会場には何と170人もの先生が集まるほどの大盛況ぶり! 大阪や福岡から駆け付けた人もいたとか。熱意のある先生がこんなにもいるのだと、胸が熱くなりました。
 キムタツ先生のセミナーは、白熱教室とTED Talksをいいとこ取りしたような楽しさと説得力がありました。先生が授業で使っている教材を用いて、灘高の生徒が日頃やっている単語や音読のトレーニングを、私たちも体験しました。進学校で受験の詰め込みでない授業をやっていることに感動しました! 披露してくれた授業法はすべて、大人の英語学習者もすぐにまねできるものなので、最後までじっくりと読んでください。 
灘中学・高校で英語を教える、木村達哉先生。カリスマ教師として知られている(写真左)

木村達哉です。今日はよろしくお願いします。今、私は高校3年生の担任をしています。このセミナーでは「リスニングをどのように指導するべきか」ということを、実際に灘で行っているリスニングとリーディングの授業を披露しながら、解説していきます。リーディングの授業もリスニングと基本的には同じです。全訳して読み下ろしていく授業では、リスニング力は身に付かないですから。

僕は今49歳ですが、僕らの世代というのはリスニングの指導なんてまったくしてもらわなかった世代です。だから自分が教員になっていちばん困ったのは、リスニングの指導でした。

文法やリーディングを教えるのには、まあぶっちゃけた話をしてしまえば、僕が高校時代に教わった方法をずっと踏襲しました。たとえば文法なら、前の黒板を目いっぱい使い、時制について解説をばーっと書き、例文を書き連ねる。生徒たちも必死に書き写す。頑張ってる感がすごくありますよね? だけれども、ちっとも力はつきません。

リーディングに関しては全訳をさせます。ノートの左側にコピーを張り、右側に全訳をして、上から読んでいくというような感じの授業を50分間やります。生徒はものすごく勉強します。教科書がちょくちょく変わらなければ、僕のほうは楽勝です。何年も同じノートが使えますから。

でもリスニングについては、高校でも大学でも指導を受けなかったので、授業のやり方を知らない。それでも僕が前に勤めていた学校のときは、大した影響はなかったです。当時、センター試験にはリスニングは導入されていませんでしたからね。また受験英語と実用英語は乖離していると思われていた時代なので、「今やっているのは受験英語なのだ」という割り切りがありました。受験に通用する英語だけを教えていればいいという感じでした。

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