2017年1月に就任する大統領を決める投票が11月8日、米国で始まった。最後まで選挙活動に精を出していた民主党候補のヒラリー・クリントン氏と、共和党候補のドナルド・トランプ氏だが、両陣営の雰囲気は明らかに異なっていた。クリントン陣営は、「現状で十分勝てる」という雰囲気を醸し出さないように必死だが、楽観的ムードは隠せていなかった。
一方、トランプ陣営はさも自信ありげに振る舞っていたが、ミネソタ州、ミシガン州、ペンシルベニア州など民主党が強く、同氏が勝つ見込みのない州へ選挙直前に訪問したことが混乱を招き、選挙スタッフには失望感が広がっていた。
「トランプはすべてのことをやろうとしたが、それは彼が何をすべきか決められない人物であることを示してしまった」。ニューヨーク・タイムズ紙の政治記者、ジョナサン・マーティン氏は11月6日に開かれた新聞記者討論会でこう語った。
直前の世論調査ではクリントン氏が4%リード
NBCニュースとウォールストリート・ジャーナル紙が6日に発表した共同世論調査によると、クリントン氏の支持率は44%とトランプ氏を4%上回っているものの、10月に行われた調査(クリントン氏が支持率で11%リード)からはその差はかなり縮まっている。これは、10月下旬にクリントン氏の「メール問題」をめぐって、米連邦捜査局(FBI)が捜査を再開すると発表したことを受けた結果だ。だが、6日にFBIがクリントン氏に訴追を求めないと決めたことで、一瞬盛り返したトランプ氏の勢いも急速に衰えている。
米国の大統領選は、各州の人口に応じて割り当てられた「選挙人」の投票によって最終的に勝敗が決まる。選挙人の定数は538人で、勝つには過半の270人を獲得する必要がある。基本的には一般投票で勝利した候補者がその州の選挙人を「総取り」できる仕組みになっている。11月7日時点ではNBCは、クリントン氏が274人を獲得するのに対して、トランプ氏は180人とみている。僅差でどちらに転ぶかわからない選挙人数が88人いるが、仮のこの票がすべてトランプ氏に入ったとしても、トランプ氏が当選に必要な270票には届かない公算だ。
こうした状況下、トランプ氏は民主党の土壌であるミネソタ州など3州を訪れ、同氏が得意とする労働者階級の有権者の票を少しでも増やそうと考えたわけである(NBCの予想では、これら3州はすべて「民主党が取る可能性が高い州」となっている)。共和党のある選挙アナリストは、「トランプや彼の顧問たちは、奇跡が起こることを望んでいる」と話す。
一方、共和党の選挙戦略家で2008年に共和党のジョン・マケイン氏の大統領選キャンペーンを率いたスティーブ・シュミット氏は「FBIがクリントン氏への再捜査という爆弾を落とす前は、彼女は400票以上獲得すると見られていた。FBIの件で、クリントン陣営は傷つけられたが、それでも300以上の票を獲得して、勝利するだろう」と見る。
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