ワタミ「脱ブラック宣言」の知られざる裏側 やっとできた労組、そのトップの意外な経歴
一方、渡邉氏は本誌の取材に対し、労組に対する考えの過去の発言はベンチャー企業当時のものであるとして、「現在のワタミが労働組合という形を通じて労使で対話をしていくことに関して、創業者として全面的に賛同し、再生の一つの象徴として期待を寄せている」と書面回答を寄せた。
渡邉氏は参議院議員となった2013年7月以降、委員会で複数回質問に立っている。このうち今年5月の行政監視委員会では政府の過労死防止策について質問している。やや長くなるが、一部を抜粋する。
この言葉からは渡邉氏が、労務管理の不備と社員への寄り添いの不足が問題の原因と理解していることが読み取れる。だが、問題の根源とは「管理不行き届き」のような表層的なものだっただろうか。
「社員は家族であり同志」の言葉が示す経営思想
渡邉氏は参院選出馬を機に取締役を辞任したが、自身の資産管理会社アレーテーを通じて間接的にワタミ株の25.09 %を保有する筆頭株主であり、経営に対して強い影響力を持ち続けている。前社長の桑原豊氏は2014年のインタビューで、週刊東洋経済記者の「ブラック企業批判をはね返すには、労組を認めるくらいは必要では」という問いに「ワタミには企業理念の中に、『社員は家族であり同志』という言葉がある。労使の関係は基本的に存在しない」と答えているが、この「社員は家族」という考え方こそ渡邉経営の根幹をなす思想のひとつだ。こういった経営理念そのものへの自己批判があるのかどうかは、前述の質問からはうかがえない。
ワタミと労組は10月、パート・アルバイト約1万人の賃金を引き上げることで合意したと発表した。引き上げ額は最大25円(時給)にとどまるが、団体交渉を経て労働条件を改善するという当然の手順が動き始めたといえる。同じ10月、渡邉氏は東日本と西日本の全社員を対象にした集会で、創業者として講演している。渡邉氏が現在もなお社員教育の一端を担う人物であることがうかがえる。果たしてワタミと労組は、経営を聖域なく変えることができるのだろうか。
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