ANAのLCC子会社、就航1年でケンカ別れ 話題を呼んだ格安航空が早くも試練を迎えている。

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LCC再編の口火か

日本航空(JAL)が出資するジェットスター・ジャパンも苦戦している。同社は就航後、成田空港の早朝や深夜の離着陸制限が足かせとなり、運航遅延や欠航が多発。また、社内規定を満たしていない整備士を機体の最終チェックの責任者としていたことで、国土交通省から厳重注意を受け、昨年内を予定していた関西空港の第2拠点化を延期せざるをえなくなった。書き入れ時のGW期間でさえ、搭乗率は79%と物足りない。

現在4機を運航し年内に8機程度へ拡大を目指すエアアジア・ジャパンと対照的に、ジェットスター・ジャパンは年末の予定機数を20機と、一気に拡大する計画を立てている。

LCCは本社費用などを吸収するために一定の事業規模が必要であり、10機程度を運用する規模になることが黒字化の目安といわれる。ジェットスター・ジャパンの拡大戦略はそうした理屈にはかなっているが、就航当初トラブルが相次いだだけに不安を残す。「(中堅エアラインの)スカイマークは20機にするのに約10年かけた。飛行機が来ても、パイロットや整備士の確保が大変」(他社幹部)という声もある。

今のところ、好調といえるのは関空を拠点にしているピーチだけ。着陸料について関空が大幅に割引しているうえ、関西財界も負担するなど、地元の全面的なバックアップを得られているからだ。

そのピーチも10月から成田─大阪線を就航し、東京に進出することを発表。エアアジア・ジャパンやジェットスター・ジャパンも早期の黒字化に向けて、2年目は新路線開設や増便を本格化させる。競争激化は必至だ。

エアアジア・ジャパンの合弁解消が、LCC業界再編の序幕となる可能性は否定できない。

週刊東洋経済2013年6月22日号

(撮影:梅谷 秀司)

桑原 幸作 東洋経済 記者
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