プレステVRは圧倒的な可能性を秘めている 問題点は「量産に苦戦していること」くらい

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PSVRに期待されているのは、閉塞感を打破し、ゲームというエレクトロニクス技術を駆使した遊びの世界で新たな発想、想像力をゲームクリエイターに与えることだ。ゲームに限った話ではないが、エンターテインメント産業はクリエイターこそが命運を握っている。

新しいエンターテインメントを生み出したい――。そう感じ、想像力を働かせて新たな創作に取り組むモチベーションをクリエイターに与えられるかどうかが重要だ。

PSVRは世界でもっともカジュアルにVRディスプレイを愉しめる環境を、ディスプレイだけでなく開発に必要なツールセットなども含めて提供し、ゲーム会社などの意見も取り入れながら準備を進めてきた。

VRディスプレイによるユーザー体験の革命は、表現力の向上というワンパターンな進化による没入感向上ではなく、仮想世界への”参加”を可能にすることで没入感を高めていることだ。同じような試みは以前からあったものの、誰もが手軽に愉しめるようになったのはこの1年ほどのことである。

つまり、まだ可能性の段階である。PSVRを批判するのは簡単だ。

批判をするのは簡単

なにしろ、まだこの新しい表現力を完璧に活かしたゲームは登場していない。プラットフォームとして成長し、PS3/PS4と同等規模の市場規模に成長していくには、それなりに時間がかかるだろう。しかし、それはSIE自身が充分に承知していることだ。

PS4の市場立ち上げに成功し、安定・成熟しているPS3プラットフォームとともに”刈り取り期”に入っているゲーム機事業からの収益が今後も期待できるタイミングで、次の世代への投資として、ゲームクリエイターも巻き込んだプラットフォーム作りを粛々と進めている。

今後、PSVRの普及が進めば、ゲーム以外の様々なクリエイターも、VRディスプレイに触れ、多様なコンテンツ提案を体験することが多くなっていくだろう。そこで創作意欲を刺激されれば新たな提案が生まれ、そしてその新しい提案が別の誰かを刺激する。今はそうした上昇スパイラルが機能するよう環境を整える時期と言ってもいい。

ほぼゼロだったジャンルを大きくしているため、いつ、どのタイミングでSIE、ソニーグループ全体を支える事業になるかは予想しにくい。もちろん、VR市場の成長といった予測値はいくつか発表されているものの、PSVRを短期的な増益材料として捉えるのは早計だ。

ゲーム事業は、ソニーのエレクトロニクス分門における3大ジャンルのひとつ。当面はプラットフォームとして確立され、ライバルに対しても優位性を保っているPS4が収益の柱となっていく。

しかし、そもそもVR技術はゲームだけでに閉じたものではない。

次ページ来年は映画や音楽のコンテンツも準備
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