プレステVRは圧倒的な可能性を秘めている

問題点は「量産に苦戦していること」くらい

VRディスプレイによる”酔い”などへの対策や装着感向上、それに価格戦略など、PSVRがかなり綿密な計画の上で設計されており、ハードウェア開発の面ではもっとも進んだ製品のひとつと言い切ることができる。問題があるとすれば、量産に苦戦しており、消費者のニーズに応じきれていないことぐらいだろう。

しかし、多くの工業製品がそうであるように、量産へのハードルが高くても、繰り返し生産を続けることで、歩留まりは高まっていく。今このとき、もっとも安価で、かつもっとも優れた体験を提供できるVRシステムとしてPSVRがラインナップされていることは、ゲーム産業の主要プレーヤーであり、家庭用ゲーム機でプラットフォーマーのポジションにあるソニーにとって明らかにプラスだ。

いくつかの理由は、すぐに思いつく。

ゲーム産業を発展させた3つの軸

コンピュータを用いたゲーム産業をふり返ってみると、これまで大きく3つの軸でその市場を拡大してきた。ひとつは「場の拡大・拡張」、もうひとつは「入力装置の改良・追加」、最後に「表現力の向上」である。

まず、第1の軸である「場の拡大・拡張」を振り返ってみよう。かつてコンピュータが高価だった時代、ゲーム機は事業者向けが中心でゲームセンターや喫茶店に置かれたゲーム機を、硬貨を使ってプレイするスタイルが中心だった。これを低価格化して家庭内でも遊べるようにしたのが任天堂のファミコンである。そして遊ぶ場を限定しない携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」の登場でフィールドはさらに拡大した。ネット通信対戦なども、仮想的な場への拡大・拡張といえる。

第2の軸である「入力装置の改良・追加」は、プレイヤーの動きを検出するモーションセンシング、タッチパネル、カメラの活用など、人がゲームの世界に介入していく際の手段の改良・追加のことを指す。こちらも、ゲーム産業にイノベーションを起こしてきた重要な要素だ。

そして第3の軸が「表現力の向上」である。これはコンピュータの処理能力の向上により実現してきた。現在では主にSIEとマイクロソフトが競合しながら実現していることだ。

表現力の向上はゲーム体験の視覚的な質を高めるだけでなく、現実社会と仮想社会の間にあるギャップを埋め、まるで疑似体験しているかのような没入感を実現してくれていた。これこそが次世代ゲーム機が話題になるとき、真っ先に注目される要素である。

ただし、表現力の向上はプレイステーションで3Dグラフィクスが実現されて以降、ひたすら一直線に向上してきた要素だ。それだけに、高い表現力に対する渇望感は少なくなってきた。ネットワークの活用やスマートフォンへの展開により多様化は進んでいるものの、技術的な飛躍があるわけではない。過去のIP資産を食いつぶしようなサイクルに入ってしまい、新たな成長ストーリーを描きにくくなっていた。

そこに登場したのがPSVRである。

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