──14年間続く経済番組「ガイアの夜明け」を手掛けてきました。
ドキュメンタリーだけに現在進行形で取材し、放送に至る。途中でプロジェクトが中止になったり、取材している相手が外されたり、会社自体が不祥事を起こしたりで、頓挫した企画は何本もあった。最終形がどういう結論になるか、どんなメッセージが番組に込められるか、本当にやってみないとわからない。
──ただし、歩留まりはいい?
けっこういい。たとえば、平泉の文化遺産が世界遺産登録を狙った。取り組んだ最初の年には登録を取れなかった。しかし、当初の予定とはまったく違う内容になったが、それなりのメッセージ性があり放送に着地した。また本田技研工業のジェット機開発のように長期取材を続け、放映のタイミングをずっと待ち続けた例もある。
無名のビジネスパーソンを主役に
──メッセージ性も大事なのですね。
「ガイアの夜明け」は経済で新しい形の番組ができないかと始めた。有名人はほとんど出てこない番組だ。たとえばある開発者を通して日本の産業界に変革をもたらす取り組みを映像化できないかとか。それもやぶから棒に取材するのではなく、あるビジネスパーソンを追いかけることによって、大きな経済テーマが見えてくる。逆にそのテーマを背負っているから、その人の挑戦が魅力的に見えるものを、とも。
──北朝鮮テーマで、開始から2年目で番組がブレークしました。
北朝鮮の経済情勢がまだよくわからない頃で、それを1時間分しっかり、中に入って撮影できた。あの回では日本向けスーツ輸出を手掛ける商社マンを主人公に構成した。
経済情報に結び付いたヒューマンドキュメンタリーを企図したので、ある程度難しい経済用語、データで説明しなければならない。その一方で、ドキュメンタリーなのだから、その人物の感情、その変化も含めて魅力的でなければいけない。そのバランスが難しい。
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