テレ東「ガイアの夜明け」が心にささる理由 番組プロデューサーが心がけたこと

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制作の舞台裏を披露すれば、若手社員、先輩社員とも登場したほうが幅広く共感できるドキュメンタリーになる。中高年の視聴者は幹部社員や経営者層に感情移入し、若手社員は自分をベースに見るからだ。中高年は「あんなできないやつを成長させなければいけない幹部社員は大変だ」と感じる。一方の若手は「あんな無茶なことを言われてかわいそう」と感情移入する。同じドキュメンタリーでも着眼点が違う。主人公が多面的に出てくると、同じ番組でも共感するポイントが増えてくる。それでまた視聴者を幅広くつかまえられるのでは、と意識している。

大小問わず新聞記事が最大のネタ元

──テーマはどのように選定するのですか。

 
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新聞が最大のネタ元。ちょっとした記事からもすくい上げる。ビジネスとしてどう進んでいくか。その際どのようなものが撮れ、結果的にそれにどのようなメッセージが込められるか。スタッフみなで想像して、その想像力ないし構想力で勝負する。結果的にそうならないものも出る。その際は、毎週やっている番組の強さで、毎回そううまくはいかないと割り切らないとやってはいけない。

──スタッフの陣容は。

大体プロデューサーが4人いて、各人がその放送回の責任者になる。制作会社が年間20社から30社入っている。見たことのない企画、人脈や取材先のユニークな提案がまれにあったりする。とにかく医療分野に強いとか。社員のディレクターも、警視庁や国会を取材してきた人もいるし、バラエティ出身もいて、意識的に出身混成部隊にしている。そういう人たちが集まってきてそれぞれの感性で作るが、それをプロデューサーが「ガイアの夜明け」の世界に合わせて仕上げることになる。

──企業の広報部から企画の売り込みもあるのでは。

企業との向き合い方には神経を使う。企業が取材してほしいことと、こちらが取材したいことにどうしても乖離がある。この攻防がきつい。企業には取材されたことによるメリットとリスクがあり、緊張関係を持ちつつ制作している。取材を受けるかどうかは、今やほとんどの企業で役員会決裁や社長決裁になっている。

──28年続いている「ワールドビジネスサテライト」担当に職務が変わりました。

今は100メートルダッシュを5日連続でやっているようなものだ。ただ夜11時放送なので、夜に入ってきたニュースは何といっても“おいしい”。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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