「ヒラリー大統領」後のアメリカはどうなるか 予想される「3つのシナリオ」を検証してみる

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つまりトランプ氏の「負けっぷり」次第では、まだまだ油断のならない日々が続くということになる。この場合、安倍首相はどのタイミングでヒラリーさんに「お祝い電話」をかけたらいいのか、とっても悩むことになるんじゃないだろうか。

「下院の共和党支配が崩れるか」が大きなポイント

そこで勝手ながら、筆者が一応の目安を作ってみた。

1. 接戦シナリオ:民主党の獲得選挙人数が270~300の場合→「弱いクリントン政権と弱い共和党」。トランプ氏は敗北を認めず、各州で訴訟を乱発。トランプ支持者たちも、「共和党主流派が真面目にやっていれば勝てたはず」と言って怒りだし、共和党内の分裂が深刻な状態に。クリントン政権は難産の上に発足するが、支持率は50%程度で低迷する。(参考:2004年選挙でブッシュ大統領が286対252の僅差で勝利した際には、ケリー候補の敗北宣言は翌日に持ち越された)。

2. 中間シナリオ:民主党の獲得選挙人数が301~350の場合→「弱いクリントン政権とトランプ残党の戦い」。トランプ氏は敗北を認めるものの、新しい右派メディア「トランプTV」を創設してヒラリー批判を継続。トランプ支持者たちもこれに同調し、共和党も尻馬に乗って民主党批判を展開。クリントン政権は支持率60%程度の船出となる。(参考:2012年選挙では、オバマ大統領が332対206でロムニー候補の挑戦を退け、接戦を予想していた共和党陣営は深いショックを受けた)。

3. 地滑りシナリオ:民主党の獲得選挙人数が351以上の場合→「強いクリントン政権と弱い共和党議会」。大負けしたトランプ氏は政界からの引退を宣言し、トランプ支持者たちも雲散霧消する。クリントン政権は支持率70%程度と高い求心力で発足する。(参考:2008年選挙では、オバマ候補がマッケイン候補を365対173の大差で破り、オバマ人気が沸騰した)。

次なるポイントは、同日に行われる連邦議会選挙の帰趨である。上院は民主党が1議席差くらいで多数を奪還しそうだが、下院は共和党多数の壁を突き崩せない見込み。上院で民主党が多数となることは、新政権人事の議会承認が容易になることを意味するので、ヒラリーさんにとってはグッドニュースである。

それとは逆に下院の共和党支配が続くということは、彼女にとってバッドニュースとなる。これでは公約している「富裕層に対する増税」や「不法移民の合法化」、「最低賃金時給15ドル」などの政策は全く議会を通らないことになってしまう。つまり「アメリカ版・決められない政治」がまだまだ続くということになる。

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