総裁任期延長で変わる「ポスト安倍」の構図 「石田聖美」は目算が狂い弱体化も

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一方、石破氏らポスト安倍を狙う面々は、「任期延長」で総裁選戦略の見直しを迫られている。これまでの動きから総裁選への出馬が有力視されるのは石破、岸田両氏に加え、野田聖子元総務会長、稲田朋美防衛相の4人だ。永田町では4人の名前の各1文字を組み合わせて「石田聖美」などと呼ぶ向きもある。

前々回の総裁選で地方票では首相を圧倒した石破氏は、参院選後の人事で地方創生相続投や閣内横滑りを断り、「自由人」(石破氏)となった。2018年9月の総裁選出馬を前提に全国行脚を続けているが、代わりに入閣したとされる腹心の山本有二農水相の環太平洋経済連携協定(TPP)承認案の審議をめぐる「強行採決発言」が国会混乱を招いたことも含め、党内の風当たりは厳しい。

第2次安倍政権発足以来一貫して外相を務める岸田氏は、「党内リベラルグループの代表」(岸田派幹部)なのに、党内タカ派のリーダーでもある首相に忠実に従うことによる「禅譲狙い」とみられている。参院選後の人事で幹事長就任説も浮上したが、首相の外相続投要請には素直に従った。このままでは首相が3選出馬を決めた時に対抗馬として出馬できるかも微妙だ。

「石田聖美」は目算狂い、弱体化、分散化も

前回総裁選で、推薦人20人の「壁」を突破できずに出馬を断念した野田氏は「次回総裁選には出る」と明言する。しかし、無派閥で手兵も少なく、今後も「無役」が続けば出馬自体が厳しくなる。

首相が「将来の首相候補」と持ち上げる稲田氏は「すべてが安倍頼り」(細田派幹部)ともみえる。首相の「秘蔵っ子」として要職を渡り歩いていることへの党内の嫉妬も強く、臨時国会での野党側の"稲田いじめ"にも党内は見てみぬふりが目立ち、「総裁選どころか、『安倍と共に去りぬ』では」(自民長老)との意地悪な見方もある。

こうしてみると、"安倍1強"の長期化が後継候補の「弱体化、分散化」にもつながりそうな状況だ。もし、首相が「3期9年」を務め上げれば石破、岸田両氏は64歳、野田氏60歳、稲田氏62歳で、野田氏以外は現在の首相よりも「年長」となる。国民的人気を誇る小泉進次郎氏も40歳の大台に達し、後継レースに参戦する可能性も出てくるだけに、現在の総裁候補達にとって「2年後も見えないのに5年後のことなど予測しようがない」(岸田氏側近)というのが実態だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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