「6月、日本株大暴騰」の根拠 「5・23ショック」のあとに、待ち受けるもの

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これは当時見ることが出来た外生的リスクの一例だが、他のリスクについても全く同じであった。そうである以上、「外側から」日本バブルが崩される危険性は低い。その一方でこの夏に参議院選挙を控えているわが国の安倍晋三政権が株高を崩すことはあり得ない。余程の偶発的な事態が生じない限り、「日本バブル」第1弾は続き、まずは最初のクライマックスを迎える―――。

統計分析が語る「黄色信号の点滅」と、公開情報分析(Open Source Intelligence, OSINT)が教えてくれる「リスク・フリーな状況」。余りにも矛盾した両者の中で私がどうしても気になっていた一つの現実。それが、ロンドン・シティから訪れるはずの“あの人”からの「訪日中止」を伝えるメッセージだった。

そして5月23日。「その時」は余りにも突然、やって来た。長期金利の急騰を受け、日本銀行が2兆円規模での資金供給をマーケットに対して即時実行。これを受けて、「日本株を持たざるリスク」にばかり目がいっていた機関投資家たちは一気に日本国債へと視線の向きを変えた。その結果、国債価格は上昇し、長期金利は無事に下がり始める。だが、その「代償」として日本株マーケットでは平均株価ベースで1143円もの“暴落”となった。結果的に言えば、まずは精緻な統計分析が正しかったというわけなのである。

日本人全体が「はめられた」

だがここで「まず」と言ったのには理由がある。―――「5・23ショック」を受けて新聞・メディアは盛んに「潮目が変わった」と書きたてた。しかし公開情報分析でグローバル・マクロ(国際的な資金循環)に対するウォッチを続ける私の目から見ると、事態は何も変わっていなかったのである。つまり引き続き外生的リスクという観点から言うと「リスク・フリーな状況」が続いていたというわけなのである。つまり何も変わってはいないのである。

事ここに及んで、私はようやく全てを理解した。他ならぬホーム・グラウンド(=日本マーケット)でわが国の機関投資家たちは、またぞろ海外勢によって「はめられた」のである。いや、機関投資家だけではない。政府・日銀も含め、私たち日本人全体が「はめられた」のだ。

「異次元緩和」の実施は、デフレ対策に対する責任を負うのが、日銀から政府へと完全に移ったことを意味していた。なぜならば事実上、無制限となる日本国債買い入れを通じてマネーのばら撒きに応じた日銀としては、後はそのカネがどのようにして使われるのかを決める立場にはないからだ。そのため、「インフレ率2パーセント」という目標が達成されるようコントロールしていく以外に日銀サイドでなすべきことはなく、「成長戦略」や「公共事業」といったデフレ脱却のための措置を講じるべきは、もっぱら安倍政権ということになってくる。マーケットでは煽られる期待で株高が先行し、「株価についてコメントはしない」と述べつつも、「世紀の名宰相」と海外メディアが囃したて始めたせいだろうか、テレビ・カメラの前に立つ安倍首相は笑みをこぼすことが多くなった。

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