フェイスブックを超える?若者サイトの美学 ヤフーも絶賛、若者文化の具現者

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タンブラーは、数あるブログサイトの中でも「美しい」という特徴を持っている。カープはタンブラーをゴチャゴチャと多機能に仕立て上げる代わりに、シンプルな機能をとてもわかりやく使えるようにした。ちょうどカープその人と同じように、だ。

より美しく見せることができることが、若者やクリエイターに支持されている

そんなミニマリスト的な真髄を理解したのは、クリエイティブな人々だった。自分が撮った風景写真を美しく見せてシェアしたい、どこかで見かけたきれいなモノを見せたい、うまくできた作品をここで発表したいなど、長々と言葉で語るのではなく、ビジュアルでコミュニケートしたい人々だ。

そんなクリエイティブな人々が、さらにクリエイティブな人々を呼び、タンブラーは美しいビジュアルでユーザーたちが表現し、コミュニケートする場所になったのだ。タンブラーのサイトを見ると、忙しく、情報過剰なインターネットからの、一瞬の逃避を味わえるはずだ。

15歳で高校中退、ネット富豪へ

カーブが最初に仕事でおカネを設けたのは12歳のとき。10歳になる前からプログラムを書き始め、11歳でHTMLを独学で学んだ。そしてニューヨークの近所の会社のために、ウェブサイトを作り始めた。15歳のときに高校をドロップアウト。それ以来、学校へは行っていない。

知り合いのアニメ会社や、スタートアップに務めた時期を経て、自分の会社を創設。プログラマーを雇い、インターネット企業などへのコンサルティングを行っていた。ティーンエージャーだということを隠すのに必死だったという。

2006年のあるとき、仕事がなかった2週間を利用して作ったのがタンブラーだった。2週間の間にユーザーが7万5000人になり、翌年の秋にはコンサルタント業を閉めた。そしてタンブラーに専念し始めたのだ。後は、ユーザーがうなぎ上りに増えるのを見ているだけだった。

インターネットのスタートアップというと、これまでは「手っ取り早く作って、金儲けしよう」という意図が透けて見えたものだが、タンブラーは、その美しさや丁寧な作り方から、カープの人柄がうかがえる。「普通の人たちに通じるようなサイトを作りたかった」と彼は語っている。

日本好きで、日本語も習い、5カ月も滞在した経験があるという。無駄なものは持たず、自分の生の感覚でサイトを作り、会社を運営する。それが、タンブラーに人々が引き寄せられた理由だ。ごく普通なことかもしれないが、これまでインターネットではなかなか感じられなかった手触りである。

課題は、ヤフーに買収されても、カープらしさ、タンブラーらしさを失わないこと。現在26歳。カープは今、大きなチャレンジに直面していると言える。
 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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