東京・大阪の「通勤時間」はやはり長かった 電車に乗っている時間は意外と短いが

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このような、通勤・通学の際に電車に乗っていない時間を合計してみると、乗り換え回数1回の場合、東京(首都圏)では25.4分、大阪(近畿圏)では27.4分。電車の乗車時間以外で実に30分近い時間を要していることになる。乗車時間では「30分~35分」が最も多いという結果を重ね合わせると、これで通勤時間はほぼ片道1時間に達してしまう。

つまり、都心までの乗車時間が30分程度の駅が最寄り駅だったとしても、駅までのアクセスや電車を降りた後の徒歩、さらに乗り換えに要する時間などで、トータルでの通勤時間が1時間近くとなるケースが多いわけだ。

近く見えても時間がかかる

では、首都圏の場合、目的地が東京駅周辺、乗車時間は計30分程度で乗り換えは1回という条件では、どのあたりまでが通勤圏になるだろうか。東京駅までは新宿からJR中央線快速で約13分、池袋から東京メトロ丸ノ内線で約18分、上野からはJR山手線で約8分だ。

この条件に当てはまるのは、新宿発着の路線の場合、小田急線なら新宿から約8kmの経堂駅(世田谷区)付近、京王線もほぼ同じで約7kmの桜上水駅(同区)付近。池袋発着の路線では同駅から約6kmの西武池袋線・練馬駅(練馬区)付近、約4kmの東武東上線・中板橋駅(板橋区)付近となる。

いずれもターミナル駅から10km足らずだが、これでも平均的な通勤者の場合、トータルでの通勤時間は1時間近くかかってしまうわけだ。東京駅までの距離が近い上野発着の路線では距離がやや延び、常磐線だと上野から約17kmの松戸駅(千葉県松戸市)付近、高崎線・宇都宮線なら約20kmの浦和駅(埼玉県さいたま市)付近までが圏内に入るが、これも「遠距離」というほどの場所ではない。駅へのアクセスや乗り換え時間は、思った以上に通勤時間を引き延ばす要素になっていることがわかる。

通勤時間の短縮は、引っ越しなどの際にもポイントになる都市生活者の悲願のひとつ。電車に乗っている時間の長さに注目が集まりやすいが、データからはそれ以外の徒歩や乗り換えに要する時間も大きなロスになっていることが見えてくる。今後、複々線化などの進展でラッシュ時の所要時間が短縮される見込みの路線もあることを考えれば、「都心に近い駅から徒歩10分」の場所より、やや都心から遠くても駅に近い場所に住んだほうが、トータルでの通勤時間を短くできる可能性もあるだろう。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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