ロシアは択捉以外の島を手放すかもしれない 米国の専門家が日ロ交渉の行方を分析

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基本的な概要が次第に明らかになっている。ロシアは何も条件を付けずに4島のうちの小さい2島(色丹島、歯舞群島)を返還して、日本の名誉を守る可能性があるのだ。

そうなれば、安倍首相には残りの大きい2島(択捉島、国後島)をめぐって公式対話を始めるための政治的猶予が与えられるだろう。共同統治という形で合意に至る可能性もある。あるいは、ロシアが正式な領有権を日本に移転し、代わりに日本はロシア軍基地の土地を永久的に無償で貸与するという可能性もある。結果としてロシアは国家安全保障上の利益の担保として軍のプレゼンスを維持することができる。

別の可能性としては、日本とロシアが互いに妥協して大きい島を1島ずつ取ることもありえる。つまり日本にとっては択捉島以外のすべての島が返還される、というシナリオだ。 

ノルウェーとの領土問題は解決した

これらのシナリオからわかるのは、一部の予想よりも比較的大きな妥協がロシア側に求められるということだ。しかし、2010年を思い出して欲しい。ロシアとノルウェーは均等分割という単純な方法で、深刻な北極圏の領海問題を解決した。当時のロシアは現在ほど政治的・経済的な圧力を受けていなかった。

ロシアが北方領土問題を打開すれば、米国主導の孤立・制裁政策 (日本も渋々参加している) に対するくさびとして日本との合意を利用することもできる。

日本との貿易・金融面でのつながりが拡大することは、米国に不本意ながら従っている他の同盟国にとっても有利に働く可能性がある。これらの国は広大なロシア市場から締め出されることを望んでいない。日本との関係改善によって、ロシアは深まりつつある対中関係からより多くを引き出せる可能性もある。中国はロシアの孤立した状況に付け込んで、ガスパイプラインと地域統合において非常に好都合な長期契約を取り付けている。

2010年にノルウェーと領海問題で合意した時のように、ロシアには西側諸国よりもうまいやり方で領土問題を解決した実績があると言うこともできる。西側諸国が最終的に用いるのは制裁を含む強制的措置だ。

今日に至るまでプーチン大統領は、ロシアによるクリミア併合が平和裏に、一発の銃弾も使わずにおこなわれ、民主的な住民投票で承認されたと主張している。ロシアと日本の国境線が変化するという事実だけでも、国境の調整が必要だとするロシアの議論の根拠をわずかに強化することになるだろう。ロシアには、1991年にソ連が崩壊して以来の事実上の国境を、実際の人口、インフラ、資源の分布に合わせて調整するべきだとする議論がある。

このような議論は西側諸国にとっては虚しく聞こえるかもしれないが、ロシアでは受けが良さそうだ。こういった議論があることで、プーチン大統領は領土問題の合意に必要な国内の政治的インセンティブを得られる可能性がある。合意できれば、待ち望まれる対外貿易と外国投資への道が開かれ、ロシアの国際的孤立にくさびを打ち込むことになるだろう。

(執筆:Nikolas Govosdev 、Matthew Rojansky)

ニコラス・グボスデブ氏はForeign Policy Research Instituteの上級研究員。マシュー・ロジャンスキー氏はウィルソンセンター・ケナン研究所所長。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

 

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