(最終回)垂直統合と水平統合、垂直分離と水平分離

 

池末成明


その衝撃
コンバージェンスは、垂直統合と水平統合で整理する方法もあります。垂直統合とは、情報やコンテンツの発信・流通・受信の三段階を統合することをいいます(図の水色)。たとえば、かつて、米国ではテレビを製造している会社が放送局も持っており、番組の制作も行っていました。これは典型的な垂直統合の例です。水平統合とは、情報やコンテンツの発信・流通・受信のそれぞれの段階を水平的に統合することをいいます(図の青)。たとえば、外では携帯電話、会社の中では固定電話として使える電話は水平統合型のサービスです。また、水平統合には地理的な統合もあります。たとえば、ホットスポットや携帯電話のローミングも水平統合によるサービスです。

表:垂直統合と水平統合

 一方、コンバージェンスの成功原則のひとつに、「コンバージェンスとダイバージェンス(分離)は共存できる」とあります(The trillion dollar challenge, DTT)。独占禁止法や通信業界を中心とする競争政策においても、各国政府とも垂直分離と水平分離を進めてきました。わが国の通信事業においても総務省がさまざまな分離政策を進めてきましたが、特にここ最近の分離政策は、TMT業界の崩壊的革新(disruption)を加速すると思われます(The Hundred Year Storm, DTT。これらの政策は、新興の企業の成長を促す政策だと言われていますが、既存の企業であっても、この政策の流れに逆らわず時流に乗ることで、新たな飛躍の機会をつかむことができると思われます。

固定通信業界における垂直分離
固定通信事業では、パソコンのブラウザやインターネットなどのプラットフォームも標準化されており、コンテンツやアプリケーションの開発者はインフラを意識する必要はありません。これは、垂直分離が進んだ恩恵を受けているわけです。さらに、こうしたプラットフォームを活用したインターネットの利用者にインターネット接続サービスを提供するインターネットサービスプロバイダ(ISP:Internet Service Provider)、ポータルサイトやECサイトなどの事業がわが国では自由化されています。ISPは、コンテンツの入口と出口付近の流通に特化したビジネスモデルで、ポータルサイトやECサイトもアプリケーションサービスという入口に特化したビジネスモデルです。国の政策としてみた場合、垂直分離を進めた結果、さまざまなサービスが横展開し、水平分離が定着したと言えます。

固定通信業界の水平統合
一方、企業側からみた場合、コンテンツのアグリゲーション(集約)は水平統合のビジネスモデルです。典型的なコンテンツアグリゲータはISPですが、ISPにコンテンツを提供するコンテンツアグリゲータや消費者に直接コンテンツを提供するコンテンツアグリゲータも多数存在します。
また、多数のケーブルテレビ会社を運営する事業者であるMSO(Multiple System Operator)も地理的な水平統合によるビジネスモデルです。また、MSOは、コンテンツを集約し、参加のCATV各社にコンテンツを配給しますが、コンテンツを集約するという意味でも水平統合だと言えます。
利用者の多いコンテンツアグリゲータや視聴者が多いMSOは、コンテンツホルダーとの契約でも有利に話を進めることができます。
また、前述したように、携帯電話やホットスポットのローミングサービスも水平統合によるサービスです。他にネットワークの相互接続や統合も水平統合のひとつです。

携帯電話業界の垂直分離
かつて、ある携帯電話会社は、データ通信ビジネスを開始するにあたって、アプリケーションやコンテンツを大量に外部から購入し、利用者に提供することを計画しました。これは通信業界では常識的な垂直統合によるビジネスモデルだと言えます。しかし、最終的には、この携帯電話会社は、そのコンテンツを紹介する場所と料金の回収代行に徹することにしました。ある意味のテナント業に徹することにしたわけです。これは、垂直分離に他なりません。また、携帯電話端末のブラウザや開発環境などのプラットフォームを標準化する動きもあり、これも垂直分離の流れだと言えます。

 

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