(第3回)利益を生むコンバージェンスのための7原則(前編)

池末成明

組織のコンバージェンスを中心に

 コンバージェンスとは、異なる組織がコラボレートして、共通のプラットフォームの上で、異なる技術やサービスを融合させ、新しい製品やサービスを生み出すことをいいます。コンバージェンスは、新しいビジネスモデルを生み、バリューチェーンや業界のパワーバランスを一変させ、さらには業界を超えた再編を引き起こすこともあります。
 たとえば、携帯電話の音声通信とデータ通信のコンバージェンスは、携帯電話通信網を使ったコンテンツ配信と代金回収というビジネスモデルを生み出し、コンテンツの流通のあり方を一変させ、携帯電話事業者をコンテンツビジネスの立役者にまで引き上げました。
 TMT企業は、コンバージェンスの3つの構造(プラットフォーム・組織・製品とサービスのコンバージェンス)の中での自社と自社の製品やサービスの位置づけをはっきりさせると、コンバージェンスの戦略を立てやすくなります。DTT(Deloitte Touche Tohmatsu)は「利益を生むコンバージェンスのための7原則(以下、成功原則)」を提唱していますが(The trillion dollar challenge, DTT)。この成功原則も、コンバージェンスの3つの構造の中でとらえると、見通しがよくなります(表1)。

表1成功原則とコンバージェンスの構造の関係
  原則 プラット
フォーム
製品と
サービス
組織
コンバージェンスの原動力は顧客のニーズであり、テクノロジーではない    
出遅れると敗者になる  
タイミングがすべて
事業化への発想がコンバージェンスの効果を最大化する
コンバージェンスの世界では、勝者と敗者がたえず入れ替わる
コンバージェンスとダイバージェンスは共存できる    
コンバージェンスは、それに関わる当事者全員にメリットをもたらす必要がある    

 成功原則は、特に説明がなくても、理解できるものばかりですが、「コンバージェンスとダイバージェンスは共存できる」という成功原則だけは、このままでは意味がわからないかもしれません。今回は、まずこの成功原則を紹介し、その後、主に組織のコンバージェンスに焦点をあて、関連する成功原則を紹介したいと思います。

コンバージェンスとダイバージェンスは共存できる
  ダイバージェンスとは、製品やサービスの機能や訴求するポイントを絞り込み、他の製品やサービスと差別化することをいいます。たとえば、ラジカセはコンバージェンスによる製品ですが、携帯用の録音機能のないテープレコーダーはダイバージェンスによる製品です。
 携帯電話にはさまざまな機能がコンバージェンスされるほど、端末メーカーや携帯電話会社の利益を圧迫します。逆にダイバージェンスすることで、携帯電話のコストが下がるだけでなく、新しい電話のイメージを作り出し、さまざまな用途に使用できる携帯電話よりヒットする可能性もあります。このように製品やサービスの開発では、コンバージェンスだけでなくダイバージェンスも検討する必要があると思われます。
 また、DTTでは、「ブロードバンドやトリプルプレイを語るより、単にテレビ放送だけを告知する方がもっと市場にアピールする可能性がある」と提言しています(TMT Trends Predictions 2006 A focus on the media sector)。たとえ、そのサービスがコンバージェンスを提供できるものであったとしても、プロモーションとしては、ダイバージェンスを訴求するわけです。

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