アマゾン読み放題、勝手に「20社削除」の衝撃 講談社、小学館など大手出版社も困惑

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少なくとも6日午後の段階で、アマゾンから講談社へのリアクションは何もない。アマゾンは公式コメントとして「Kindle Unlimitedは(中略)書籍や動画などを対象とした数多くの定額利用型のサービスと同様に対象作品は随時変動する」としている。

ただ、全削除は「随時変動」の範囲を超えていると言えるだろう。出版関係者からは「何の断りもなく作品を一方的に削除する手法は商習慣になじむのか」という指摘もある。

講談社は「秘密保持契約があり、契約内容や交渉経緯は言えない」。アマゾン・ジャパンも「多々ご質問があるかと存じますが、個々の取引関係に関わることのためコメントは控えさせていただいております」と多くを語らない。だが、関係者の話では、アマゾンは読み放題の対象作品数を多くそろえるために、出版社に支払う利用料を2016年の年末までは上乗せする契約を結んだようだ。

上乗せ契約に耐えられなかったアマゾン

アマゾンと出版社との付き合いは、紙媒体や電子書籍の販売など、アンリミテッドにとどまらない

読み放題の場合、ダウンロード数やダウンロード後に読まれたページ数に応じて利用料が出版社に支払われるのが一般的。だが、今回の上乗せ契約では、ダウンロード後の書籍や雑誌の1割以上が読まれた場合、1冊まるごと読まれたのと同じ収益を出版社に支払うことになっていた。

和書12万冊以上、洋書120万冊以上という豊富な作品数でサービスを開始できたのは、日本になじみのない、定額読み放題の方式を根付かせようという出版各社の思いがあったのも事実。しかしそれ以上に、今回の上乗せ契約が、長引く出版不況にあえぐ各社、特に中小の出版社には明るい未来を想像させた面も否めない。

今回の掲載削除について、「あまりにも読者が殺到し、アマゾンの予算を超えたから」との報道もある。しかしそれはあくまでもアマゾンが独自に決めた予算の問題であり、契約相手やユーザーの知るところではない。

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