新電力に切り替えた人が2%しかいないワケ ヒットと不発を分ける「18のツボ」

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では人を動かすツボはどこにあるのか? 筆者が所属する博報堂行動デザイン研究所では、18のツボがあると考えています。

“行動アクセル”系と“行動ブレーキ”緩和系のツボ

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代表的な「行動デザインのツボ」

これは(1)「リスク感を忘れさせ、思わず動かす」ための“行動アクセル”を入れるタイプと、(2)「過度のリスク感を取り払い動きやすくする」ために“行動ブレーキ”を緩和するタイプ、この2つの基準で「人を動かす力学」を分類・整理したものです。

その中のひとつに「帰属意識のツボ」があります。これは、代表的な“行動アクセル”系のツボです。たとえば郷土愛や母校愛は、多くの出身者・関係者を動かす力学なので、マーケティングでもさまざまなかたちで活用されています。47都道府県対抗で競わせる、都道府県ごとに違う商品をつくる、卒業生たちに母校を応援させる、などの手口が多くの事例で使われているところを見ると、やはりこの「ツボ」は反応がいいのでしょう。

「時間限定のツボ」というのもあります。これも強力な“行動アクセル”系のツボです。「時間限定のタイムセール」や「期間限定商品」につい反応してしまう人も多いはず。

今年の4月に東京都美術館で開催された「若冲展」は、普段は別の場所(京都・相国寺や東京・宮内庁など)に収蔵されているためになかなか同時に見ることのできない大物作品の展示が話題となって約44万6千人の観客を動員しました。でも「4時間待ち」にものぼった行列の理由は、それだけではありません。会期が4月22日から5月24日のほぼ1カ月と非常に短かったのです。約94万6千人を動員した2009年の「国宝・阿修羅展(東京国立博物館)」の会期が69日間だったことを考えると、会期1カ月というのはあまりにも短いですよね。この「時間限定」感が、多くの人を「若冲展」に駆り立てたのでしょう。

さらにメディアが「行列ぶり」をこぞって報道したことも、さらに動員を加速したと考えられます。貴重な休みの日に駄作の展示を見るのは時間とおカネの損失。しかし何が「見る価値がある傑作」で何が「駄作」かに関して、ほとんどの人は(筆者も含め)評価基準を持ち合わせていません。だから「行列」がわかりやすい“社会的証明”(お墨付き)になるのですね。

「お墨付きのツボ」は、代表的な“行動ブレーキ”緩和系のツボ。ブレーキ緩和とアクセル加速、という両面からの作用があったことが、若冲展の大ヒットの要因だったのだと思います。

ほかの “行動ブレーキ”緩和系のツボも見てみましょう。たとえば、スイーツの誘惑は特に女性には抗い難いものがあるといいます。それをなんとか意志の力で抑制しようとしているときに、目の前に「体にいい機能性チョコ」を差し出されたらどうでしょう。「これはチョコではなく、健康食品だから」と自分に言い訳して、堂々と食べる人も出てくるはず。機能性チョコレートがヒットしている理由はここにあります。

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