働き盛りの「がん」、悩みはこんなに複雑だ 会社や家族と、何をどうすり合わせるべきか

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砂川さんも「働けるのに治療前に自主退職してしまう方が多い」と指摘し、「がんになっても、休職などの制度も上手に活用し、今の職場を辞めないことが望ましい」と言います。

「まずは今の職場での就労規則や制度を確認しつつ、主治医から病状、治療内容、スケジュールなどを確認し、今後の見通しを伝えて、どのようにすれば働き続けられるか、調整していくことが望ましいです」(砂川さん)

そのために、以下のような行動、対処法が有効だと言います。

① 医療の進歩により、がんになっても働けるケースが増えていることを患者本人、家族、職場が「知る」こと。
② 患者本人が、自分の病気のことや治療方法、副作用、治療計画などの情報について主治医等から正しく収集すること(本人から職場へうまく説明できない場合は、資料やデータを活用する)。
③ 収集した情報から、仕事をする上で、具体的にどんな支障がでてくるのか、主治医等とすり合わせ、職場で配慮してほしい点を整理すること。
④ 患者本人がどうしたいのか方向性を決め、職場の上司や人事担当者、産業保健スタッフとスケジュールや仕事内容について話し合うこと。
⑤ 一人ひとり症状が異なるため、治療や副作用の状況に応じて定期的に見直し、柔軟に対応していくこと。

組織に所属できる「ありがたさ」を噛みしめた

西口さんがお子さんと訪れた「癌封じ」のお参り

西口さんはがんになったことで、仕事や会社、人生への考え方も変わってきたと言います。

「退院してから2~3週間は体力を戻すために自宅にいて、子どもと過ごせるので嬉しかったんです。でも、社会とのかかわりがないことは不安です。もちろん家族もいいのですが、社会の輪に入りたい気持ちが芽生えてくる。ですから今は、組織に所属していることへのありがたさを感じるようになりました」(西口さん)

ただし、以前のように「モーレツに働く」というのとは違うスタイルをスタートさせました。

「会社と相談して決めた、これまでとは異なる働き方です。9~18時のフルタイムでしっかり働くものの、残業はせず、家でごはんを食べる。体調の変化や治療に対する周囲の理解もあり、この環境で働けることのありがたさが分かりました」(西口さん)

次ページ人生の分岐点としての「がん」
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