異動・退職するとき考えたい「引き際の美学」 自分を守りつつ、次につながる去り方を

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私の経験や見聞きしてきたことからいうと、会社のあなたに対してのスタンスには、2種類の「におい」を感じます。ひとつは、なるだけ退職時期を引き延ばして被害を最小限にとどめたい、もしかしたら、あなたへの対応次第では翻意してくれるかもしれない、という楽観的な先送り感覚。もうひとつは、あなたが退職してしまってもなんとか持ちこたえられるよう、後任の確保・育成や業務の担当変更などをソフトランディングさせたい、というリスク管理型の思惑。でもどちらが真意だったにしても、退職に至るまでのあなたの気持ち、それに対する思いやりや配慮は感じられませんね。

あなたがポジティブで前向きなアドバイスを求めているのに、身も蓋もないけれど、会社ってそんなものなんですよ。あなたのことを守れるのはあなた自身しかいないのです。退職する会社に忠誠心や申し訳なさを、必要以上に感じることはありません。

どうか、自分に優しくしてあげてくださいね。あなたは3年、心身が悲鳴をあげるまで十分に努力してきました。その中で、上司や同僚は、あなたの業務量やストレスを察知する機会はいくらでもあったはずです。それに気づいて見て見ぬふりをしてきたのか、お酒や食事をご馳走してフォローした気分だったのか、高い評価をしたり待遇をあげたりして応えてきたつもりだったのか、いろいろなケースがあるでしょうが、根本的にあなたと向き合うことをしなかったのは確かです。だから、自主退職を決めて知らせた後にドライな気持ちになって対応しても、決して非常識な人だとは私は思いません。

ずるずるしてしまうのは回避しよう

そうは言っても会社も困ってしまうだろうし……と思ってしまう気持ちもよくわかります。でもね、意外と困らない。なんとかなる。小さな会社だとしてもそれが会社でもあるんです。あなたが自分の心身の叫びをよく聞いて、「これ以上頑張ったら壊れる」と思うのなら、それに従って会社と対話しましょう。私なら、「かかりつけ医から、過労が進んでいるから静養せよと言われている」とドクターストップだと強調するかもなぁ。さすがに、退職前提の社員が倒れたりしたら大変だし、それこそコンプライアンス的にも倫理的にもまずい雰囲気が伝わることでしょう。「年末まで勤務することは難しいので今月末で」などと1カ月以内くらいで退職できるように持っていくことは十分可能だと思いますよ。

そして、繰り返しますが、まったく罪悪感を感じることはありません。あなたが「言いにくいことを言えないタイプ」なのだとしたら、本当にかかりつけ医に相談して、診断書を書いてもらい、それを使って対話することで直接言いにくいことを言わずに済む方法だってあります。ほかにも「次の内定が出ている」とか「実家に戻る事情がある」とか、会社が納得してくれる理由はいくらだってありますから、ずるずるしてしまうのは回避してください。

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