コストコはなぜ年会費4400円に上げるのか 徹底した「顧客主義」の裏側にある苦悩

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コストコの最新年度決算書より

コストコの決算資料はコストコIRページより見ることができる。そこで「FY 2015 Annual Report」を見てみよう。すると意外な同社の姿が見えてくる(以下は1ドル=102円で計算)

売上高  1136億ドル(約11兆5000億円)
会費収入 25億3300万ドル(約2580億円)
仕入原価 1010億6500万ドル(約10兆3000億円)
販管費 114億4500万ドル(約1兆1600億円)
開店準備費用 6500万ドル(約66億円)

いわゆる日本で言うところの本業の儲けを示す営業利益は、36億2400万ドル(約3700億円)となっている。

驚愕するのは、この仕入原価の高さだ。売上高に対しては実に89%に至る。よく薄利多売というが、まさにこれこそ薄利多売である。コストコのいう、「出来る限りの低価格」とは、まさに信じてよい数値だ。

そして、これを支えるのが会費なのである。会費収入は25億3300万ドルとなっているが、これこそ利益の大半を稼ぎだす源泉だ。売上高営業利益率を計算すれば3.2%となっているものの、もし会費収入がなければ同社の営業利益率はたったの1%となってしまう。

つまりコストコは、お客を会員にさせることで利益を「確定」している。そのうえで、お客に安心して薄利の商品を買ってもらい、同社側も利益「確定」後に、安心してサービスを提供するという徹底した「顧客主義」のビジネスモデルなのである。さらにすごいのがその継続率だ。アメリカやカナダでは、実に会員の91%が更新し、世界でみても88%のメンバーが更新している。

コストコ会費の値上げ

コストコにとって会費収入がきわめて重要だとご理解いただけたはずだ。そのうえで、日本のコストコがなぜ会費値上げに踏み切ったのかを見ていこう。

まず日本コストコの年会費は、各国から見て、それほど高くはない。

アメリカ:55ドル=約5600円
イギリス:30ポンド=約4000円
オーストラリア:60ドル=約4600円
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