任天堂が決断した「過去のしがらみ」との断絶

ソフト流通の大改革は実を結ぶか

「ポケモンGO」のヒットで任天堂への注目が再び集まっている(写真:ZUMA Press/アフロ)

任天堂の岩田聡前社長が逝去し、1年以上が過ぎた。この間、任天堂を取り巻く環境は大きく変わった。今年に入りスマートフォンゲームをリリースし、秋には「どうぶつの森」「ファイアーエムブレム」といったタイトルのリリースを控える。さらに来年3月には、次世代ゲーム機「NX」の発売を予定する。まさに今、社内は大わらわだ。昨年秋には経営陣の若返りが行われ、君島辰己社長の下で集団指導体制への移行が進んでいる。

週刊東洋経済は9月3日号(8月29日発売)で、「ポケモンGOブームでも やがて寂しき任天堂」を特集した。NXへの期待と不安に加え、若返り人事の裏側などを追った。任天堂は新体制へ移行し、明らかに“変質”しつつある。大阪のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」では「マリオ」などを使用したアトラクション建設が予定される。「過去に二度、任天堂はUSJからの誘致を断っている」(関係者)にもかかわらず、自社キャラクターの活用へと舵を切った。

かつてマリオは「開発者の宮本茂氏にお伺いを立てていた」(社員)が、今では自社IP活用のガイドラインを作成して誰でも使えるようにもなっている。ユニクロは任天堂のキャラクターを使ったTシャツデザインを募集しているが、これも「過去2回断られ、3回目の今回で実現したもの」(別の関係者)。

国内最大のゲーム卸企業を子会社化

こうした中、任天堂は8月25日に国内最大のゲーム卸、ジェスネットを子会社化すると発表した。この買収は、流通において過去のしがらみを完全に断ち切ることを意味する。任天堂はジェスネットの第三者割当増資を約45億円で引き受け、株式の70%を保有する。さらにジェスネットはゲーム卸大手アジオカのゲーム卸事業を譲受する。ジェスネットは任天堂商品の取り扱いシェア35%、アジオカは25%を占める。この2社は長きにわたり、任天堂の“ある組織”を支え続けていた。

週刊東洋経済9月3日号(8月29日発売)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「初心会」──。一般的にはあまり知られていないが、かつてゲーム業界にその名がとどろいていた組織名だ。任天堂は決まった卸売り業者を束ねて初心会を結成し、彼らに絞って商品を供給することで共存共栄の関係を築いてきた。ピーク時は50社以上が所属していたとされ、ジェスネットとアジオカは大手メンバーとして存在感を放っていた。

初心会では在庫を全量買い取ることが定められており、任天堂は在庫リスクをなくして健全なキャッシュフロー経営を築くことができた。これこそ故・山内溥元社長が編み出した儲けの方程式である。ある業界関係者は、「人気タイトルを不人気タイトルと抱き合わせ販売するなど負の側面もあった。在庫リスクを価格に反映させるのでソフト1本1万円と高止まりしていた」と振り返る。

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