尖閣問題で感じた、我ら日本人のビビり根性 首相補佐官として見た、尖閣問題の真実

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
拡大
縮小

最終的に、総理は、政府として尖閣諸島を買いました。そして「国有化はするが、それ以上は何もしない」という方針を明らかにしました。野田さんとしては、領土主権は守りつつ、中国に対して穏健な路線を採ったのです。ところが中国側は、「野田総理と石原知事が下手な芝居を打っているだけで、裏では国有化に向けて手を握っているのではないか」と不信感を抱いたのです。

というのも、中国人からすれば、およそ中央政府の言うことを聞かない地方政府など、考えられないのです(私に言わせれば、共産主義の中国に限らず、連邦国家アメリカでさえ、国防のことで、一自治体の首長が大統領の言うことを聞かないということは、まず考えられません)。

一変した世論とマスコミの論調

いずれにせよ、国有化が決まってから、中国の準軍艦が尖閣諸島に派遣されるなど、日中間でさらに緊張感が高まりました。

面白いことに、そのあたりから、世論やマスコミの論調は、微妙に変化しました。当初、イケイケどんどんだった声が、「国有化自体はいいけれど、(胡錦濤国家主席に野田総理が『国有化してほしくない』と国際会議で言われた直後という)タイミングが悪かった」と、優等生のような、神妙な、賢ぶった声に変わったのです。「領土を守るのは当然だけれど、もっと日中関係をうまく収めてほしい」という「バランス感覚」ある声も出ました。

結局、中国から圧力をかけられると、それまで勇ましく鳴り響いた進軍ラッパが、腰の引けた、慎重な、しぼみぎみの旋律を奏でるようになったのです。いつものパターンです。

こうして中国に向けられていた怒りの矛先が、いつの間にか、自分たちの政府に向けられるのです。政府に対する文句は、タイミング論など小理屈をこね回すような話ばかりです。本当は、単にビビっているだけではないでしょうか。

次ページ要は死ぬのが怖いんでしょ
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT