元トランプ選挙参謀を囲む「黒い簿帳」の衝撃 ウクライナ前政権と懇意だった米国人の正体

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ドナルド・トランプの選挙対策責任者を務めていた、ポール・マナフォート (写真:Eric Thayer/The New York Times)

キエフのインデペンデンス・スクエアから少し外れた脇道に、ドナルド・トランプの選挙対策責任者(編集部注:8月19日に辞任)、ポール・マナフォートが長年使ってきたオフィスがある。彼がウクライナの与党にコンサルティングを行っていたときのものだ。今年5月まで、家具や私物も置かれていた。

マナフォートの痕跡は、キエフのあちこちに残っている。ウクライナ政府の調査官がある不正のネットワークを解明しようと、隠されていた記録を調べたところ、マナフォートの名前と、彼が関わっていた企業の名前が見つかった。調査官らによると、このネットワークはウクライナ人の資産を略奪し、前大統領のビクトル・ヤヌコビッチ政権で選挙を操作するのに使われたという。ヤヌコビッチは、マナフォートの大口クライアントだった。

5年間で1270万ドルの支払い記録

新規に設立された国家汚職対策局によると、2007年から2012年にかけて、親露派のヤヌコビッチの政党からマナフォート宛ての支払いとして、1270万ドルが手書きの帳簿に記録されているという。調査官らは、この支払いが違法な裏勘定システムによるものであり、裏金は選挙担当者にも支払われていたと見ている。

加えて、ヤヌコビッチや側近らが豪勢な暮らしの資金を得るのに活用していた海外のペーパーカンパニーについても、検事らが調査を進めている。まるで宮殿のようなヤヌコビッチの大統領官邸には、私設の動物園やゴルフコース、テニスコートまであった。ペーパーカンパニーは何百もの不審な取引に関与していたが、その中には、ウクライナのケーブルテレビ局の資産を、1800万ドルで売却したものがあった。売却先は、マナフォートとロシア財閥のオレグ・デリパスカが設立した組織で、デリパスカはロシアのウラジミール・プーチン大統領とも親しい関係にある。

マナフォートがロシアとウクライナにおいて、金持ちの権力者たちと関わりがあったことはこれまでにも知られていた。しかし、それがどう米国と関係するのかが、大統領選挙において注目されるようになっている。つまり、トランプがプーチンやクリミア併合について好意的な発言をしていることや、ロシアが民主党メールをハッキングしたと疑われることにどう絡んでいるのか、ということだ。マナフォートの活動を検証することで、彼がどのように政治とビジネスを混同していたのか、そして強力な権力者たちからどのような恩恵を受けていたのか、新たな詳細が明らかになる。

ウクライナの汚職対策局の職員は、マナフォート宛てとされる支払いは、彼らの調査における焦点の一つになっているという。ただし、マナフォートが実際にそのおカネを受け取ったのかは、まだ確認できていない。それでも、マナフォートはおカネのやりとりの意味については理解していたはずだという。

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