「カローラ」と「サニー」何が明暗を分けたのか トヨタと日産、大衆車50周年の系譜をたどる

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乗用車の年間販売台数では、すでに2009年からハイブリッド車のプリウスがトップの座にあり、ガソリンエンジンを積んだセダンがベストセラー争いをする時代は終わっていた。それでもカローラはベスト10圏内に留まっており、ベスト30にすら入らないラティオとの差は大きく広がっていた。

2車種ともユーザーの平均年齢は60歳代と、かなり高い。その中でカローラが日本専用車として作り続けられ、落ち着いた水平基調のデザインを採用し、慣れ親しんだ4気筒エンジンを積み、MTや4WDが選べるところが、根強い支持につながっているのかもしれない。

時代の変化にも巧みに対応

カローラHVユニット

さらにカローラは、時代の変化にも巧みに対応した。2013年にはハイブリッド車を追加し、2015年には運転支援システムを装備するなど、時流に沿った進化を続けたのだ。その結果、2012年の年間販売台数では8位だったのが、2015年には4位と、むしろ順位を上げている。

一方のラティオは2014年にマイナーチェンジを実施しているが、フェイスリフトと安全装備の充実が主であり、力不足という声が多かったパワートレインに手は入らなかった。安全装備に運転支援システムは含まれず、後席ヘッドレストは2席分のみであるなど、水準に達していない部分もある。

そして今、ラティオのウェブカタログには、「一部、仕様・グレード・カラーについては、生産上の都合でご用意できない場合がございます」という注釈があり、7色あったボディカラーはすべて無彩色系の3色に減っている。販売終了は間近に見える。

日本で買える同クラスのセダンとしては、他にホンダ「グレイス」、マツダ「アクセラ」、スバル「インプレッサ」がある。すべてグローバル展開を前提とした車種となっており、アクセラとインプレッサは3ナンバーボディとなっている。

こうして見てくると、カローラの日本市場へのこだわりが、並々ならぬレベルであることが分かる。なにしろカローラ店という、車名を冠した販売店すらあるのだから。世界一の自動車会社の余裕と言えばそれまでだが、その余裕の一部をおひざ元の日本市場に振り分けているトヨタと、外資のもとでグローバル戦略を志向する日産との違いを象徴しているようでもある。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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