マックバカ必須アイテム、ビッグマックの秘密 ビッグマックはマクドナルドを救う?

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こうした問題点は注文を受けてから生産する方式に切り替えれば解決できる。そこで1999年に米国で先行展開していた受注生産システムのMFUを、日本でも2000年ごろから実験的に導入することになった。導入にはあの元ダメ店長もかかわっている。MFUはレジで受けた注文を即座に厨房のディスプレーに表示、パンを焼き始めて、ピクルスとオニオン、ハンバーグを載せて包装するまで50秒以内に提供する作り方だ。このMFUを実施するためにPOSシステムの入れ替えやパンを短時間で焼けるトースターを開発するなど厨房設備そのものを刷新した。その結果、ポテトやアップルパイなど場合によって時間がかかる商品も含めて、平均75秒以内で提供できるようになった。

メイド・フォー・ユー導入でロスは0.1%に激減

MFU導入の結果、作りたての商品を提供できるようになっただけでなく、廃棄ロスの削減にも成功した。当時の報道によればMFUの導入により、1%程度だった食材の廃棄ロスを0.1%まで1ケタ下げることができたという。

生産方法をアメリカから導入するだけではない。原田氏が経営のトップに立った2004年以降は日本独自で進めてきた商品開発を、各国マクドナルドとの一体化を進めてきた。現在、日本のマクドナルドにはハンバーガーやビッグマックなどの世界共通商品、てりやきマックバーガーなど日本独自開発商品の2種類が存在する。そこに期間限定商品としてビッグアメリカシリーズのハンバーガーや、月見バーガー、グラコロなどを投入している。

日本マクドナルドで商品開発に当たるのは6人のみだ。商品開発部は月見バーガーなど日本独自商品の開発も行うが、各国のヒット商品にも目を光らせている。各国の商品開発部門はデータベースでつながっており、現地で販売されている数百にのぼるハンバーガーのレシピを自由に見ることができる。その中から日本人の好みにあったハンバーガーを探し、商品化の可能性を探る。

MFUの導入で廃棄ロスが劇的に減ったこと、海外のマクドナルドのヒット商品を参考にできることで、日本の商品開発は大きく変わった。メガマック、クォーターパウンダーといった従来よりも大型で斬新な商品を投入できるようになり、マクドナルドの既存店の売上高向上に大きく貢献した。

ただ、1月に実施した「ENJOY!60秒サービス」は既存店売上高17%減と大幅な空振りに終わった。2月の過去の売れ筋を並べたビッグアメリカオールスターズもむなしく既存店売上高12%減と不調が続く。マクドナルドの不調を裏付けるように日本ハンバーグ・ハンバーガー協会のまとめによれば、日本のハンバーガー消費量は2009年の1日413万食をピークに2011年は407万食と下降傾向にある。はたしてビッグマックはこの苦境をひっくり返し、マクドナルド復活のアイコンとなれるのか。マックバカ達の期待はビッグマックに集まっている。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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