DIC、ソーダ味アイスの青色を生む「藻」の技術 後発のM&A巧者が勝ち取った世界トップの座

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この青色に隠された秘密とは?(写真:white_blue / PIXTA)

「DIC」の3文字を見ただけで、何を指しているのかをわかる読者は多くないだろう。2008年の変更前の社名「大日本インキ化学工業」と聞けば、2つを結び付けられるかもしれない。そう、DIC(読み方はディーアイシー)は大日本インキ化学工業の英文社名から作られた略称である。なんでわざわざ素性がわからなくなるような社名変更をしたのか。それは世界的にはDICのほうが、はるかに知名度が高かったからだ。

DICは1908年にインキ製造で創業したが、現存の国内大手では後発。今も国内のインキシェアトップは東洋インキSCホールディングスだ。ところが、「世界トップ」となるとDICにその座を明け渡す。世界シェア首位の日本企業は、ニッチ市場では数多く存在するものの、汎用品では少ない。DICがその1つになれた理由は、30年前の1986年にさかのぼる。

「師弟関係逆転」の買収で世界首位に

スピルリナという名の「藻」から青色の色素(左)と健康食品(右下)を生産するDIC

この年、DICは当時として「日本企業による海外企業買収では最大級」の買収を実現した。1ドルが160円程度のときに約840億円を投じて、米国有数の化学メーカー、サンケミカルのグラフィックアーツ材料(インキ、顔料など。以下、サンケミカルと表記)部門を買ったのだ。すでにサンケミカルは北米、欧州を中心に世界的な製造、販売網を持っていた。

買収対象の規模が大きいため「小が大をのむ」と言われ、また、DICはサンケミカルからかつて技術供与を受けていたため、「師弟関係逆転」とも言われた。が、最大の焦点は「投資額に見合った効果があるのか」だった。

サンケミカル買収で確かにシェアは上がった。しかし、以前からの積極的なM&Aで脆弱だった財務体質はさらに悪化した。企業評価の尺度が単体決算から連結決算へと推移するのと相まって、「最大級の買収」が重荷となったことは間違いない。

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