為末さん、スポーツ界は息苦しいですか? 「無菌型」の管理が、体罰へつながる

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為末:昔のスポーツ界は、選手を純粋培養するために、無菌室を作ろうとしていたんです。昔は現役時代が25歳ぐらいまでだったので、無菌室も作りやすかった。

でも、今は現役時代が延びているので、大人になったアスリートが外の情報を見聞きしてチーム内にバラまいてしまう。それにインターネットもありますし、無菌室を作るのは現実的にもう難しい。

僕はどうせどこかでウイルスにかかるんだったら、早めにかかっておいたほうがいいと思います。昔は恋愛禁止の誓約書とかを書かされたりしたんですよ。実業団チームで。

田中:へえ。

女子スポーツは恋愛に厳しい

為末:特に女子がすごいんです。まあ、恋愛してダメになった選手もたくさんいたんですけど。どうせいつか恋愛しちゃうんだから、なるべく早めに「はしか」にかかって、恋愛をしてもスポーツに打ち込めるような人間にしておくほうがよっぽど現実的ですよ。

最近、部活動の体罰の問題が報じられていますが、あれも突き詰めていくと、無菌室型の世界が要因という気がします。言い換えると、管理型、閉鎖型の世界。

田中:女子スポーツは厳しいんですか?

為末:厳しいですね。何でなのかなあと思いますけど。

田中:では、男子陸上はどうなんでしょうか?

為末:男子陸上はオッケーですね。どんどん女性と交流して(笑)。 

無菌室を作ろうとするスポーツっていくつかあるんですよ。チーム競技は無菌室型に向かいやすくて、個人競技は比較的自由な方向に向かいやすい。で、どっちの選手が社会になじみにくいかというと、無菌室型で。

田中:そうでしょうね。

為末:数字はちゃんと発表してないですけど、相撲のセカンドキャリアは厳しい。野球も犯罪者が毎年10人ぐらい出てるんです。野球をやっている子どもたちの夢を潰しかねない。プロ野球人気を保つためにも、引退後の選手の人生をもっと考えないといけないですね。野球をやることで人生が幸せになるのか、ダメだった場合に人生が崩れていくのか。

田中:そうですねえ。

為末:だから僕はスポーツ界をオープンにして、選手を社会に引っ張り出そうと頑張ってるんです。

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