桑田佳祐「ヨシ子さん」が中年の脳に良い理由 欲求を抑えすぎても男は人生を謳歌できない

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脳科学的に見ても、男性と女性とでは、右脳と左脳を連結する脳梁という部位の厚さが異なります。男性の方が、女性のそれと比べて2ミリほど薄いのです。右脳、左脳の情報交流が活発な女性は、それだけ脳の多くの場所を使うことになり、さまざまな欲求が生まれやすくなります。一方、左右の脳の交流が少ない男性は、特定の分野だけを深く掘り下げることになります。スペシャリストになる可能性を秘めている一方で、欲求の種類が狭まってしまうおそれがあります。

日本の男性はもっとヤレる!

だからこそ、脳科学者として、そして同世代の男性として、『ヨシ子さん』は心の奥底にあるものを揺さぶる、すごい曲だと感じます。60歳である桑田さんが「オッサン、元気ないぞ!」「もっとギラギラいこうぜ」と、聴く人、そして自分自身を鼓舞しているように聞こえるのです。

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冒頭にも述べたように、欲求には、暴走のリスクが確かに存在します。『ヨシ子さん』の歌詞を欲求のおもむくまま行動に移してしてしまったら、それはそれで問題かもしれません。ですが、本来、欲求は「最適な睡眠時間を取る」「欲求を解消する時間を意図的に設ける」など脳のクセを利用すれば、コントロールできることが、脳科学的に証明されています。

脳を活性化させることを意識しながら、この曲を聴き、欲求をかきたてることが、日本の男性が脳を活性化させ、人生を充実したものにしていくうえで、何よりも必要だと思うのです。

桑田さんの楽曲には、『ヨシ子さん』のように欲求をかきたてる曲だけでなく、脳科学的には「疲れきった脳を楽にする」「脳にエネルギーを与え、呼吸をさせる」いわば「聴く人に元気を与える」ものが非常に多いと思います。人々の思い出に刻まれている楽曲も数多く、桑田さんの楽曲はまさに「人から必要とされている」曲。だから売れ続けるのです。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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