新型「大阪環状線」、山手線とは違うこだわり 車両デザインの東西対決、軍配はどちらに?

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三角形のスペースにひじを置ける(撮影:尾形文繁)

このように、323系の開発は大阪環状線改造プロジェクトに密接に関連している。E235系のように量産先行車を造らずにいきなり量産化に踏み切る理由について、「他の路線で十分に運転実績のある新技術を採用しているので安全性・安定性の問題はない」とJR西日本は説明する。だが、乗客が体感する快適性に関してはかなり違いがある。車両自体にはどのような特徴があるのか。山手線と比較しながら見ていく。

まず1人当たりの座席幅の比較である。E235系は現在山手線で主流のE231系よりも1センチ長い46センチを実現した。だが323系はさらにそれを1センチ上回る47センチを達成している。

ドア付近の出入りがしやすくなる(撮影:尾形文繁)

この点に限れば323系のほうが快適ということになるが、323系はE235系よりもドア数が少ないという点に留意する必要がある。ドアが少ない分座席の設計にゆとりができるからだ。これは両者が抱えている課題の違いと言い換えることもできる。

バリアフリー対応について、両者とも各車両に車いす、ベビーカースペースを設置している点ではまったく同じだ。E235系は壁や床の色をピンク色にしてバリアフリースペースであることを強調しているが、323系はあくまでさりげないという点で違いがある。優先席については、E235系はシートに「優先席」とはっきり明記しているのに対して、323系はシート上部のステッカー貼り付けにとどまる。ただ、323系は肘掛けを設置している。足腰の弱い人にとっては立ち上がる際に便利だろう。

両端の人がゆったり座れる

このような小さな工夫を323系はいくつも施している。たとえば、ロングシートに定員ぴったりに座るとやや窮屈に感じることが多い。そこで、両端の仕切りをドアに対して垂直ではなく斜めに取り付けた。座席の奥行き側に三角形のスペースを作り、両端の人がここにひじを置くことで、ゆったりと座れるようにした。なお、仕切りを斜めにすると乗り降りする人にとってドアと車両内部の行き来が容易になるというメリットもある。まさに「一石二鳥の発想」だ。

丸い穴に棒が入っている(撮影:尾形文繁)

車両を注意深く観察すると、323系のドア付近の床の溝には丸い穴が空いている。雨水を逃がすための穴だが、よく見ると中に棒が入っている。女性のヒールが入り込まないための配慮だそうだ。

E235系でも仕切り板を半透明化して車内の開放感を演出するなどの工夫が随所に施されているが、この列車の最大の特徴は車内の至るところに設置されたデジタルサイネージだ。正面のドット模様によるグラデーションはデジタル感覚にあふれており、車内にも床面やドア開閉部など随所にドット模様のグラデーションが施されている。

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