「次の新幹線」が実現するのはどの地域か? 官民一体で攻める四国、及び腰の東九州

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開業すれば、大阪―四国4県間が約1時間半、東京―四国4県間も4時間程度で結ばれる。移動時間は確かに短くなる。とはいえ、四国新幹線にどれだけの需要があるのか。

四国電力の会長である千葉昭氏は、四国経済連合会の会長として四国新幹線の整備に力を注ぐ(撮影:尾形文繁)

この点について、千葉会長は自信たっぷりに語る。「新幹線のない16県の県庁所在地の人口で見ても、松山市は千葉市に次ぐ2番目の51万人、高松市は4番目の41万人、高知市は8番目の34万人といった具合に、四国新幹線は人口が多いエリアを走る。沿線人口は北陸新幹線や北海道・東北新幹線と比較しても遜色はない」

四国新幹線は四国4県の域内移動にも変革をもたらすという。「4県の県庁所在地間の移動が軒並み1時間以内で結ばれるようになれば、スポーツやコンサートのイベントを四国で開催する場合、四国4県から集客することが可能になる」(千葉会長)。

ネックは、主要都市が一直線につながるのではなく、高松・徳島、高知、松山に分かれていることだ。3方向の同時着工は現実的ではない。もし後回しにされる県が出た途端に一枚岩が崩れて運動が腰砕けになるリスクは否定できない。それだけに千葉会長は「4県すべてに新幹線が通ることが絶対条件」と、4県の共同歩調を維持したい構えだ。

なお、四国では、九州新幹線・長崎ルートへの導入が予定されている在来線と新幹線の両方を走ることができるフリーゲージトレインの走行試験が行なわれたこともあり、フリーゲージ導入でよしとする時期もあった。だが現在は、「時間短縮効果を期待できるフル規格での導入しかない」という意見でまとまっているようだ。

山形・秋田にも計画あり

東北エリアには奥羽新幹線(福島―山形―秋田間)と羽越新幹線(富山―青森間)という2つの基本計画線がある。山形や秋田には在来線を改良したミニ新幹線方式で新幹線がすでに乗り入れており、新たに新幹線を導入する必要性は小さいようにも思える。だが、「ミニ新幹線の速度は在来線と同じ。フル規格で整備されることで東京や沿線地域との時間が短縮される」と、山形県交通政策課の担当者は新幹線にこだわる理由を説明する。地震等で東北新幹線が不通になったときの代替輸送手段としての役割も期待できるという。

そもそも山形県の吉村美栄子知事は奥羽越新幹線の実現を公約として当選した。それだけに、新幹線実現への取り組みは沿線各県の中でもひときわ目立つ。沿線各県で構成される期成同盟会とは別個に、山形県では県、市町村、商工団体、観光物産協会などで構成する新組織を5月に立ち上げた。「オール山形で取り組む」と、県交通政策課の担当者は意気込む。

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