藤田晋(上)「評判を気にしすぎるとダメになる」 リーダーは自分を信じてやるしかない

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日本の新しいモデルを創る「新世代リーダー」とはどんな人なのか。どんな能力、教養、マインドセット、行動が必要となるのか。国内外のリーダーを知り尽くした、各界の識者たちに「新世代リーダーの条件」を聞く。
第6回目は、日本を代表するIT起業家である、サイバーエージェントの藤田晋社長に、「ネットがリーダーの仕事に与えた影響」と「これからの経営者に求められるもの」などについて聞く。

 独裁者的な威張り方はもう難しい

――リーダーの役割は、以前と比べて変化しているのでしょうか。

リーダーの役割はみんなを一つにまとめて、組織で成果を上げること。それは普遍的なものであって、以前と変わりはありません。

ただし、ネットがリーダーの仕事環境を大きく変えました。みんながいろんなことを知って声を上げられるので、リーダーの仕事が難しくなっている部分と、やりやすくなっている部分があるんではないかと思います。

――難しくなっている部分とは何ですか?

今は学生でも企業の情報をかなり持っていて、僕らの頃とは全然違うぐらいマセています。要は、昔であれば、会社の中では専制君主みたいに振る舞うリーダーというのが存在しえたんですが、今は、「うちの会社はおかしいんじゃないか」という情報がネットを通じて世の中に出されてしまう。

情報が得やすくて、誰でもブログやツイッターを使って声を上げやすいだけに、みなを一つに束ねるのが、より難しくなっている。リーダーは、頭の中の程度も含めて身ぐるみ剥がされてしまうので、情報格差をうまく利用した、独裁的な威張り方はもう難しい。

――逆にやりやすくなっている部分は?

これは、ネットのいい面ですが、ネットを使えば素早く情報伝達ができる。昔は全員を集めて、声をからして、力説しないといけなかったので、スピーチのうまさが仕事で重要だった。でも今は、ネットできちんと説明責任を果たせる。どんどん方針が変化しても、ネットで意思統一ができるという面があります。

リーダーは以前よりも書く能力を活かすことができるようになっています。たとえば、大阪市の橋下徹市長はツイッターをうまく利用している。書くのが苦手な人は、ツイッターをうまく利用できないし、フォロワーも増やせないし、『週刊朝日』問題のようなことが起きても、何も説明できないですよね。

リーダーの役割は、ビジョンをきちんと示して、みんなを1つにしていくことですが、一人ひとりの話を聞いてると、とてもじゃないけれど束ねられません。みんなそれぞれ好き勝手言いますから。周りの声に流されてしまったり、簡単にぶれてしまうリーダーは、やっぱりダメですね。そういう意味では、少し頑固というか、信念を貫くような強さが、より必要な時代だと思います。

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